根管治療、気になる一回あたりの治療時間は?
みなさん、こんにちは。
今回は、ルールを守った根管治療をする場合、1回あたりどのくらい時間がかかるか、についてお話しします。当院では、ルールを守った根管治療1回あたり、1時間〜1時間半を患者さんとお約束しています。
以前のブログにも書きましたが、ラバーダムの装着時間が45分より短いと、ラバーダムをしてよかった、と思う患者さんが多いようです(1)。治療時間が1時間半だとしても、実際、ラバーダムを装着している時間はおそらく1時間前後ではないかと思います。
では、実際どのような時間配分で、ルールを守った根管治療を行っているか、図1に示します。
まず、患者さんに治療の内容や効果、術後の痛みや投薬等々についてお話しします。
その後、麻酔を行い、虫歯を取った後、唾液が根管へ入らないように隔壁を作製し、ラバーダム防湿、歯の消毒、仮封除去(仮詰めをとること)等々を行います。ここまでが30分前後必要です。
次に、本格的にルールを守った根管治療をスタートしますが、だいたい60分前後かかるので、トータル1時間半となります。
以前のブログにも参考画像として出したケースを図2に示します。
図2左の画像は、根管治療前(うわもの、あるいは土台をはずした直後)です。汚いなぁ〜、という印象を持つ方が多いと思います。私も同じ意見です。
この状態を右のように、う蝕検知液で染めだしながら、歯が硬いか軟らかいかを診査しながら、悪いところを取り除き、きれいだなぁ〜、と思える状態になるまで、1時間くらいかかるのです。
1時間の詳細は、マイクロスコープをのぞきながら、機械的拡大と次亜塩素酸ナトリウムやEDTAによる洗浄を交互に行い、悪いところを取り除きます。マイクロスコープは、より安全に、より確実に機械的拡大や洗浄を行い、悪いところを取り除くために使われます。
このように、マイクロスコープを使って、ていねいに、慎重に、確実にルールを守った根管治療を行うと、どうしても、患者さんとお約束する時間が1時間〜1時間半かかってしまいます。
ただし、トータル1時間で済む場合もあります。たとえば、根管が1つだったり、隔壁を作製する必要がない等々、治療のステップが省けるケースは、治療時間が1時間程度で十分です。
悪いところとは、細菌に汚染されている可能性がある部分です。根管治療の目的は、根尖性歯周炎の予防と治療です。根尖性歯周炎の原因は、細菌です。細菌をより安全に、より確実に除去することが、根管治療が終わったあと、また病気にならず快適な食生活を送れる近道になります。
次回は、根管治療の回数についてです。お楽しみに。
(1) Stewardson, D. A., and E. S. McHugh. “Patients’ attitudes to rubber dam.” International Endodontic Journal 35.10 (2002): 812-819.