歯の神経を抜くと、歯が弱くなるって本当?
みなさんこんにちは。
今回のブログは、歯の神経を抜いた(根管治療)後、歯が弱くなる、と聞いたことがあると思います。
はたして、根管治療が歯を弱くさせるのかどうか?
結論からいうと、歯を弱くさせる大きな要因は、歯の神経を抜いたこと(根管治療)ではなく、歯を削っていくことのようです。
Reeh(1)らは、42本の抜歯した上顎第二小臼歯を使って、根管治療を窩洞形成前と窩洞形成後に行い、歯の剛性がどのくらい変わるか、非破壊検査で実験しました。
窩洞形成とは、つめものを入れるために、歯を削ることです。図1、2のO窩洞、MOあるいはOD窩洞、MOD窩洞をご覧いただくと、わかると思います。
歯の剛性とは、歯に荷重がかけられた時、同じ形をどのくらい保っていられるか、要するに、変形しにくいか、という意味です。
図1は、窩洞形成前に根管治療を行った場合です。
Y軸は歯の剛性を、X軸が実験の手順を示し、以下の通りです。
治療前の状態→根管を探し当てたところ→機械的拡大→根管充填(機械的拡大後、根管が空洞になっているところをガッタパーチャという材料でうめること)→MOD窩洞形成(歯の両端を削る窩洞形成)治療前の歯の剛性を100%としています。
根管治療が終了した時点で、剛性は95.7%と、治療前の状態より4.3%しか減少していません。
一方で、根管治療後に、MOD窩洞に形成した場合、歯の剛性は31.1%と、根管充填直後より64.6%も強度が大幅に減少しています。
では、窩洞形成後に根管治療を行ったらどうなるか、図2のグラフでみてみましょう。
窩洞形成前に根管治療を行ったグループと同様、Y軸は、歯の剛性を示し、治療前の剛性を100%とします。
X軸は、実験の手順を示し、以下の通りです。
治療前の状態→O窩洞(歯の咬み合う面のみ削る窩洞)→MOあるいはOD窩洞(O窩洞から歯の一方の側面に広がる窩洞形成)
→MOD窩洞形成(歯の両端を削る窩洞形成)→根管を探し当てたところ→機械的拡大→根管充填(機械的拡大後、空洞になっている根管をガッタパーチャという材料でうめること)
結果は、窩洞形成を行うと、O窩洞(80.2%)、MOあるいはOD窩洞(53.6%)、MOD窩洞(37.3%)と、窩洞形成が広範囲になるにつれて、歯の剛性は約63%と大幅に減少します。
一方で、根管治療における歯の剛性の変化は、MOD窩洞形成時(根管治療開始時)は37.3%、根管充填終了後は31.7%と、わずか5.6%の減少です。
Reeh(1)らは、根管治療が歯の剛性を弱くさせる大きな原因ではなく、歯を削ることで歯の剛性は弱くなる、と結論付けていました。
特に辺縁隆線(図3)を保存することが、歯の剛性を保つ上で重要な意義を持つ、とも述べています(1)。
歯質の保存は、歯根破折を予防するために、とても意義があります。
根管治療だけでなく、虫歯の治療をする際は、歯を削る量を最小限に考えながら行う必要があります。
根管治療自体が、歯を弱くする要因ではなく、歯を削る量が多くなればなるほど、歯は弱くなることがご理解いただけたと思います。
現実的に、根管治療を行う歯は、歯が大きく削られていることがよくあります。
次回は、大きく削られている歯は、どのように修復したらよいか、お話しします。
お楽しみに。
(1) Reeh, Ernest S., Harold H. Messer, and William H. Douglas. “Reduction in tooth stiffness as a result of endodontic and restorative procedures.” Journal of endodontics 15.11 (1989): 512-516.