歯内歯周病変について
ももこ歯科のブログを読んでくださるみなさま、いつもありがとうございます。
前回までは、ポケットが浅くてサイナストラクトがある症例のお話でした。
今回から、ポケットが深くてサイナストラクトがある症例についてお話ししようと思います。その前に、歯内歯周病変とはどんな病気か?をお話ししていきます。
歯内歯周病変とは?
上の図は、歯内歯周病変が起きた時の図です。
感染した部分が茶色になっていて、根尖部の茶色い丸がレントゲンでよく見る根の先の黒い部分(根尖部透過像)に相当し、『根の先の膿』と一般的に呼ばれるところです。上の図の歯の左側のように、サイナストラクトと根の先の膿と歯周ポケットが交通している場合もあるし、右側のように根の先の膿が歯周ポケットと交通せずサイナストラクトを形成している場合もあります。感染源は、歯の内部も考えられるし、歯周病から起きていることも考えられます。このように、同一の歯の中に病気があるし、歯の周りにも病気がある病態のことを歯内歯周病変といいます。
原因が、歯の中の病気だろうと歯の周りの病気だろうと、あるいは両方であろうと、治療は、歯内療法から行うことが大原則です。
では、歯内歯周病変の治療の流れをみていきます。
歯内歯周病変の治療の流れ
歯内歯周病変の治療には、根管治療と抜歯が挙げられます。もし、患者さんが根管治療を選択する場合は、以下のフローチャートのように治療を進めます。
①根管治療を選択する場合
歯内療法後にサイナストラクトが『治った』『治っていない』を判断するためには、3ヶ月は必要です。歯内療法後に、歯の周りの組織が治るために必要な期間が3ヶ月ですので、その間は、歯周治療は禁忌です。歯周治療を行うと、歯内療法によって治るはずの組織を傷つけてしまい、治癒を遅らせてしまう可能性があるからです。
根管治療後あるいは外科的歯内療法後にサイナストラクトが治癒していれば、必要に応じて歯周治療を行います。しかし、根管治療と外科的歯内療法を行なってもなおサイナストラクトや歯周ポケットが存在する場合は、歯周治療を行います。
②抜歯を選択する場合
原因の歯を特定後に患者さんが抜歯を選択されたた場合は、歯の中の病気も歯の周りの病気もすべて一度に取り除くことができるため、短期間でサイナストラクトが治るメリットはあります。抜歯後は、インプラントや義歯、ブリッジのいずれかの治療方法を選択できます。
歯内歯周病変の原因の特定
サイナストラクトがどの治療の後に治ったかで、原因が歯の中の病気か、歯の周りの病気かを特定します。
根管治療後、あるいは外科的歯内療法後にサイナストラクトが治れば、歯の中の病気が原因で歯内歯周病変が起きた、とわかります。
根管治療後、あるいは外科的歯内療法後に根尖部透過像が縮小、あるいは消失しているけれども、サイナストラクトは治癒しておらず、さらには歯周ポケットが深い場合は、歯内歯周病変の原因は歯の周りにあると特定し、歯周治療を行います。
歯内歯周病変の治療は、進めていくことで原因が明らかになるため、診断的な要素が多く含まれます。
たとえば、以前ご紹介した3つの症例は、歯内歯周病変で歯の中の病気が原因であったことを示します。
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ももこ歯科での根管治療4〜サイナストラクトは治るのか 症例3〜
症例1〜3は、歯内歯周病変の中でも、歯の中が原因でサイナストラクトを形成し、なおかつ歯周ポケットが浅かったものです。次回以降は、歯の中にある病気が原因で歯内歯周病変になったけれども、歯周ポケットが深い場合の治り方についてお話ししていこうと思います。症例1〜3とは異なる治り方をします。
歯周ポケットについて
サイナストラクトが根管治療後あるいは外科的歯内療法後に治癒しているにもかかわらず、歯周ポケットが深いままの場合、歯周病のリスクが残ります。『歯周病のリスクが残る』という状態は、治療後に歯肉の腫脹や痛みが出現するリスクがある、ということです。
解釈としては、
歯内療法はサイナストラクトに奏功した=サイナストラクトの原因は歯の中にあった
しかし、
歯周ポケットが深いまま=歯周病が残っている=将来的に歯周病で歯肉が頻繁に腫脹したり自発痛や動揺が出現する可能性がある
あくまで私見ですが、歯内歯周病変で歯周ポケットが深い場合、歯内療法後にサイナストラクトが治癒しても、歯周ポケットは深いままであることが多いように思います。サイナストラクトは治癒しても歯周ポケットが深いままの状態を悪化させないようにするには、歯内療法後に歯周治療を受けてメンテナンスを継続することが重要です。歯周ポケットが深くても、歯周組織検査の時に歯肉からの出血がなければ経過は良いと判断してもいいと思います。しかし、経過良好だからメンテナンスを受けなくていい、ということにはなりません。歯周組織検査における歯肉からの出血の有無は、歯周病が進行しているか否かの重要なサインとなります。お口の中のメンテナンスを継続することをお勧めします。
歯内歯周病変の歯を残すか抜歯するか
歯を残して歯内療法を試みることも、抜歯することも、両者とも正解です。
患者さんは、可能性として、以下の状況を治療前に知っておく必要があると考えています。
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『歯内療法でサイナストラクトが治っても歯周ポケットが深いままであれば、歯周病のリスクは残る』
他にも意思決定に必要な要素はありますが、歯を保存したいという希望を叶えるためには、事前に知っておく未来像があります。
歯科医師は、患者さんの意思決定に必要な情報を提供した上で、患者さん自ら、歯内療法を選択するか、抜歯を選ぶか、決められることが理想です。
次回から、ケースレポートで、サイナストラクトがあり歯周ポケットが深いケースについてお話しします。
お楽しみに。