ももこ歯科での根管治療4〜サイナストラクトは治るのか 症例3〜
ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。
前回までのシリーズは、不十分な根管形成によりサイナストラクトが出現し、根管治療のみで治癒したケースでした。
今回の症例は、根管治療+歯根端切除術で治癒したサイナストラクトについてです。
概要
患者:43歳 男性
主訴:右下の腫れが治らない、おできがある
患歯:右下5
現病歴:2021年12月ごろ 右下歯肉の腫脹と自発痛が出現した。歯科医院を受診したところ、膿がたまっているといわれ、根管治療を繰り返し行っているが、腫脹が改善しないため、2022年4月12日 ももこ歯科を受診した。
診査
打診痛はなく、根尖部圧痛を認めました。歯周ポケットは3mm以内、動揺は生理的範囲内でした。
左上の口腔内写真では、左に比べると右下顎齦頰移行部の腫脹が明らかです。左下の写真は、サイナストラクトにエアーをかけています。瘻孔は一目瞭然です。
ポイント造影の結果、サイナストラクトの原因は右下5で、根尖部に大きな透過像があり、根尖は湾曲しています。それから、右下4の根管と比べると、右下5根管は太い印象です。根尖が湾曲していて、太い根管形成を考えると、トランスポーテーションが起きている可能性があります。
術前CTをみてみましょう。
右上3D画像をみると、根尖部に大きな穴があいています。大きな根尖部透過像はどのセクションからもわかります。根尖は遠心にカーブしており、根管形成中にファイルがオリジナルの根管を追従できず、トランスポーテーションを起こし、根尖性歯周炎が発症したことが原因で、サイナストラクトが出現したのではないかと考察しました。よって、根管治療を繰り返していても、トランスポーテーションが原因で、オリジナル根管の根尖部分を十分に消毒できず、根尖孔外感染が起こり、腫脹が改善されなかったのではないかと思います。
診断と治療方法
<診断>
根管治療中断歯・症状がある根尖性歯周炎
<治療方法>
①根管治療
②抜歯
本症例は、根管治療でサイナストラクトは治癒しない可能性が高いです。ファイル操作でトランスポーテーションを是正することは難易度が高く、過去の報告によると、トランスポーテーションが起きた歯の根管治療の成功率は、35.6%です*。患者さんには、トランスポーテーションが原因で、根管治療のみでサイナストラクトが治癒することは難しく、根管治療後に歯根端切除術を施行する可能性が高いことをお話ししました。
根管治療後のサイナストラクトについて
根管治療後3ヶ月で経過観察を行いました。
サイナストラクトにエアーを吹きかけると、瘻孔が見えます。ポイント造影では、右下5根尖部透過像に到達します。
コンセプトを遵守した根管治療を行ってもサイナストラクトは治癒しませんでしたので、歯根端切除術を施行することになりました。
つづきは次回のブログでお話しします。
お楽しみに。
*:Gorni, F. G., & Gagliani, M. M. (2004). The outcome of endodontic retreatment: a 2-yr follow-up. Journal of endodontics, 30(1), 1-4.