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ブログ

NiTiファイルの進化について〜材質の改良〜

院長ブログ

ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。

今回は、NiTiファイルの材質の改良についてのお話です。

2007年に、第三世代のNiTiロータリーファイルが発売されたことをきっかけに、大きな転換点を迎えます。
第二世代のNiTiロータリーファイルと大きく異なる点は、第三世代のNITiファイルの表面に熱処理を施し、ファイルの破折抵抗を向上させたことです。

上の図の左は、超弾性タイプの第一・第二世代の頃のNiTiファイルで、
上の図の右は、マルテンサイトタイプのNiTiファイルで、
透明根管を形成した写真です。

同じ号数で形成しても、超弾性タイプのファイルは、
マルテンサイトタイプのファイルに比べて、
根尖部で少ーーしトランスポーテーションを起こしているのがわかると思います。

ストレートな根管であれば、ファイルの特徴をそれほど気にせずに形成できますが、
根尖に行くに従い、カーブしている根管だと使用するNiTiファイルの特徴を考えたほうがよさそうです。

そこで、マルテンサイトタイプのファイルの特徴についてお話しします。

マルテンサイトタイプのNiTiファイルの特徴

まずは、マルテンサイトタイプのNiTiロータリーファイルの動画から。

 

では、超弾性タイプとマルテンサイトタイプのNiTiロータリーファイルの比較をしていきます。

超弾性タイプ(第二世代のNiTiロータリーファイル)の特徴を示す動画をご覧になりたい方は、
このブログをご参照ください。

まず、前提として室温の環境で、超弾性タイプのNiTiロータリーファイルを曲げて力を取り除くと元の真っ直ぐな形態に戻り、マルテンサイトタイプのNiTiロータリーファイルは曲げて力を取り除いても、曲がったままの形態を維持することができます。ちなみに、超弾性タイプのNiTiロータリーファイルは、室温・体温にかかわらず、応力によってNiTi合金の変態を起こします。この現象を応力誘起マルテンサイトといいます。一方で、マルテンサイトタイプのNiTiロータリーファイルは、室温と体温の環境下では、それぞれ異なる性質を持ちます

温度による変態

では、また動画から見てみましょう。

 

室温で曲げたファイルは、室温より低くなる(動画だと冷却スプレーをかける)と硬くなり曲がったまま安定した形態になります。室温より高い温度になると、曲がったマルテンサイトタイプのNiTiロータリーファイルは、元の形態に戻ります。

臨床での応用

根尖がカーブしているような根管を形成する場合、マルテンサイトタイプのNiTiロータリーファイルは、超弾性タイプのNiTiロータリーファイルよりトランスポーテーションは起こしにくいと思います。欠点としては、超弾性タイプのNiTiロータリーファイルの方が形成中の切削感はあります。だからといって、根管内の細菌数の減少を期待できるのは、マルテンサイトタイプの NiTiロータリーファイルよりも超弾性タイプというわけではなく、両者の間に大きな差はないと思います。

根管が湾曲していて、トランスポーテーションを起こす可能性がある時、ファイルにプレカーブをつけて、根管内にファイルを入れます。しかし、室温で曲げたファイルは、根管内に入れると温度が上昇するため、ファイルがまっすぐになってしまいます。そこで、上の動画のように、室温で曲げたマルテンサイトタイプのNiTiロータリーファイルに冷却スプレーをかけて硬くなったファイルを根管内に入れると、体温になるまでの温度上昇に時間稼ぎができますから、根管のカーブした部分を形成する際、ファイルはある程度曲がった状態で根管形成できるので、トランスポーテーションを予防することができるかもしれません。

最後に便宜的な計らいになります。開口障害のある患者さんや、第二大臼歯の根管形成根管内にファイルが挿入しにくいケース時、室温でファイルを曲げた状態で根管内にマルテンサイトタイプのNiTiロータリーファイルを根管内に挿入して根管形成することができます。これは、超弾性タイプのNITiロータリーファイルではできないことです。

上記のように、第三世代以降のNiTiロータリーファイルには、熱処理加工を施したおかげで、根管形成がより安全に、より利便性が向上しました。

 

では、いきなり出てきた『マルテンサイト』や前回のブログで登場した『オーステナイト』、って一体何の話?ということで、次回、お話ししていきます。

お楽しみに。