NiTiファイルの歴史1
ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。
今回から数回に分けて、根管治療でいつも使っているNiTiファイルについてのお話です。
1958年 アメリカの海軍兵器研究所で、Buehler博士が対潜水艦攻撃用ミサイルの開発に際し、耐熱性、耐衝撃性、対酸化性のある材料を探していたところ、NiTi合金が靭性*1に富むことがわかりました。靭性の大きさは、NiTi合金を板状にして、アコーディオンのように伸び縮みさせても、破断されないくらいでした*2。
その後、NiTi合金の弾性と形状記憶効果*3が発見され、歯科では矯正用ワイヤーとして使われ始め、歯内療法では、1992年 第一世代のNiTiファイルが登場しました。
第一世代のNiTiファイルが登場してから、ステンレススチールファイルに比べると、湾曲根管を形成しやすくなりましたが、NiTiファイルでも太くなると剛性*4が高くなり、下の図のような湾曲根管における根尖までを形成するとなると、ファイルが破折する可能性が高くなります。
では、どのようにしてNiTiファイルの破折する確率を減らし、湾曲根管でも形成しやすくしていったか。
NiTiファイルの特徴である弾性と形状記憶効果に工夫をこらして、現在では、湾曲根管でも限界はありますが、以前と比べると破折しにくいように開発されています。
次回は、NiTiファイルの各部位についてのお話です。
お楽しみに。
*1:靭性とは、簡単にいうと、物質の粘り強さです。物に力が加えられた時、変形して亀裂が入りますが、いかに亀裂が入りにくいか、進展しにくいか、を靭性が大きい、と言います。
*2:宮崎修一. (2012). Ti-Ni 系形状記憶合金の研究と開発経緯. まてりあ, 51(5), 209-215.
*3:弾性とは、物体に力を加えた時にひずみが生じるが、力を取り除くと元の形に戻ろうとする性質です。
形状記憶効果とは、物体を変形させ、ある一定の温度になると元の形に戻る現象です。
*4:剛性とは、変形のしずらさです。物に力を加えた時、変形しずらいほど、剛性が高い、といいます。