歯冠長延長術について〜矯正的挺出以外のフェルール獲得方法 その2〜
ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。
今回は、歯冠長延長術を行なった症例報告です。
このブログから読む方は、下記にあるカテゴリー『挺出』をクリックし、日付が古いブログから読んでいただけると理解できると思います。大枠をつかむと、理解は深まると思います。
歯冠長延長術を施行した症例
優先すべきは、患者さんが気になっている症状の改善、次に、歯をもたせるために行うべきこと、を考えて治療を進めていきます。
具体的には、今回の症例でたとえると、根管治療で『かむと痛い』『冷たいものにしみる』を改善後、歯冠長延長術を行ないました。
患者さんは、66歳女性。
主訴は、『咬むと痛い。冷たいものと温かいものにしみる』とのことでした。
原因の歯は左下顎第二大臼歯のクラック(ヒビ)でした。
まずは、根管治療を行い症状が改善したことを確認後、歯冠長延長術を施行しました。歯肉の治癒に必要な期間は、1〜2ヶ月程度です。当院では、第2大臼歯の根管治療後は3ヶ月間の経過観察を行います。術後3ヶ月で型取りし、かぶせ物が入りますので、根管治療後に歯冠長延長術を行なっても十分間に合います。
なぜ歯冠長延長術を選択したか
理由は2つあります。
1. 上の歯とかみ合っているので挺出できない(下の口腔内写真を参照)
2. 左下の親知らずを抜いた後歯肉が厚くなっている(下の歯冠長延長術の写真を参照)
上下の歯でかんでいるから、挺出は不可能ですが、歯肉の厚みが増した分を薄くすればフェルールを獲得できる、よって、歯冠長延長術を選択しました。
そもそも、フェルールの獲得は必要だったか
根管治療後の歯という理由だけでなく、クラックがあればなおさら、歯の全周を樽のタガのように囲えるクラウンにした方が良いと考え、フェルールを獲得するために歯冠長延長術を選択しました。歯冠長延長術の術前の写真で、矢印部分の歯肉と歯が同等な位置であり、左下顎第2大臼歯遠心面にクラックが存在することがわかります。この状況でクラウンをかぶせようとすると、左下顎第2大臼歯遠心面をクラウンで囲うことはできず、クラウンを乗せるような状態になります。その結果、歯の全周を樽のタガで囲うことはできず、クラックを予想以上に伸展させてしまう恐れがありました。
今後の経過を注視しなければなりませんが、長期にわたって経過良好であることを望んでいるのは、患者さんだけでなく歯科医師も一緒です。
次回のお話は、『そもそもその歯に根管治療は必要か』についてお話しします。
お楽しみに。