矯正的挺出をなぜ行うか〜生物学的幅径の確保1〜
ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。
前回のお話しをさらに深掘りし、『矯正的挺出はなぜ行うのか』理由を今回から2回に分けてお話しします。
挺出を行う理由は2つあります。
1つは生物学的幅径の確保、もう1つはフェルールの確保です。フェルールの確保については次回お話しすることとして、今回は、生物学的幅径の確保についてお話しします。
生物学的幅径とは?
生物学的幅径とは、骨から歯肉までの3mmの幅のことで、すべての歯に存在し、感染から身を守るために必要な幅と考えられています。
ちなみに、歯肉の上の1mmの幅は、次回お話し予定のフェルールです。フェルールは、かぶせ物を長持ちさせるために非常に重要です。
歯が、虫歯や歯の破折で歯肉より低い位置にあるなら、生物学的幅径を確保する必要があります。
たとえば、こんな歯です。
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左の写真は、歯が歯肉より下にある歯で、生物学的幅径を確保した方が理想的です。右の写真の矢印の部位は、挺出により歯が歯肉と同等になっているところで、生物学的幅径を確保できています。理想は、歯肉と歯が同じ位置にあることです。よって、この写真の症例は、まだ生物学的幅径が全体で確保できていない状況です。
挺出は可能かどうか
生物学的幅径を確保する方法は3つありまして、矯正的挺出、外科的挺出、歯冠長延長術です。いずれの方法であっても、生物学的幅径そしてフェルールを確保した後、歯冠歯根比はどうなるかを考えます。
挺出後、骨の中にある歯根はどれくらいの長さになるかを考え、歯冠長より歯根長の方が長ければ、生物学的幅径とフェルールを確保した方がいいです。逆の見方をすると、フェルールが確保できない歯は、かぶせた後もたない歯かもしれません。
上記の症例は、挺出しても歯根長の方が歯冠長よりも長いため、生物学的幅径とフェルールを確保するために、挺出を行いました。
右上のレントゲンの矢印でわかるように、
術前のレントゲンの根尖の位置と術後の根尖の位置がずいぶん変わっています。
もし、生物学的幅径を確保すべき歯で、歯冠歯根比が悪くなる歯であれば、そもそも長期でもつ歯ではないかもしれません。
次回は、フェルールについてです。お楽しみに。