根管治療を失敗させない=成功させる要件〜その5〜
ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、
いつもありがとうございます。
今回のブログも、根管治療を失敗させない=成功させる要件シリーズ第5弾、
歯根部分編第2回目:根尖部分の汚れを取るための守るべきルールについてです。
守るべきルールは、根管治療の基本コンセプトです。
根尖部の汚れをどうやって取るか
根尖部分の汚れをファイルという器具を使ってきれいにします。
ファイルは、一番細い6号から太いと100号以上まで存在しますが、
最終的に根尖部の汚れを取るために使われるファイルの太さは40号から60号です。
これ以上の太さのファイルで根尖部分を拡大すると、
基本コンセプトの2つ目:根管解剖の維持ができなくなります。
逆に、40号より細いファイルで根尖部分を拡大すると、
基本コンセプト1つ目:無菌的処置の歯の中にいる細菌の除去は、
理想的な状態に到達できません。
しかし、適正な太さのファイルで根尖部分を拡大しても理想的な状態で、
細菌の除去はできません。
根尖部を無菌化できない理由
図1は、根尖部分の構造を図示しています。
赤いところは歯髄組織で、根尖部では青い線の歯根膜と隣接しています。
このように歯髄組織は不規則な形態をしていますので、
適正な太さのファイルを使って根尖部を拡大したとしても、
歯髄組織を完全に除去することは不可能です。
理由は、ファイルは円を描くように回転するので、
不規則な形態の歯髄をすべて除去することはできないのです。
しかし、ファイルによって除去されない部分が残っていても、
洗浄剤の抗菌効果が活躍してくれます。
適正な機械的拡大と洗浄剤の抗菌効果で
根尖性歯周炎を予防する
報告によってバラツキはありますが、
ファイルの太さを最低でも30号で根尖部分を拡大すれば、
洗浄剤が根尖まで届くと言われています*。
図2は、洗浄剤を根尖部に到達させる際、
根管の拡大の有無によって違いが生じるかどうか、を図示したものです。
根尖部を拡大した方が拡大しないよりも、
洗浄剤が根尖部へ到達しやすく細菌を除去できるので、
根尖性歯周炎の再発を防ぎ予防に努められます。
根管の細菌を除去するために大活躍するのが機械的拡大で、
除去しきれなかった部分の細菌は洗浄剤の抗菌効果で除去します。
ちなみに、治療と治療の間に細菌を繁殖させないために、
貼薬剤の役割も大切です。
適正なファイルの太さで根尖部を拡大し、
洗浄剤の抗菌効果で理想的な状態で細菌を除去し、
貼薬剤により治療と治療の間の細菌の繁殖を防ぐことが大切です。
次回のお話は、歯根部分編最終回:汚れを取ろうとした結果…です。
お楽しみに。
*Khademi, Abbasali, Mohammad Yazdizadeh, and Mahboobe Feizianfard.
“Determination of the minimum instrumentation size for penetration of irrigants to the apical third of root canal systems.” Journal of endodontics 32.5 (2006): 417-420.