根管治療にCTは必要でしょうか?? ~パート2~
ずいぶん肌寒くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?今日のテーマは、9月6日のブログから引き続き、根管治療とCTについてのお話しで、患者さんの主訴から考えられる診断名と臨床所見が矛盾している時、CTを撮影したケースについてお話しします。
65歳男性患者さんの症例
左上歯肉に食べ物や歯ブラシをあてると痛むことを主訴に、ももこ歯科を受診されました。
初診時口腔内写真の丸で囲まれている歯肉を押すと、患者さんは痛みを感じていました。
痛みの原因が歯であれば、初診時レントゲン写真の矢印で指す歯になります。
しかし、矢印で指す歯をトントン叩いても、押しても、かんでもらっても痛みはありませんし、歯周ポケットも正常で、グラグラ揺れておらず、しっかりと骨に植わっている歯でした。
丸で囲まれている歯肉を押すと、骨の裏打ちがあれば硬いはずなのに、ベコベコした柔らかい感じがありました。
パノラマレントゲンを撮影すると、左上顎洞内に不透過像があるのと、矢印で指す部分の上顎洞底線が消失しています。
歯が原因で炎症が上顎洞へ広がっているのか、左上顎洞の炎症のみが原因の病気なのか、はたまた別の病気か、なかなか判断がつかず、症状と診断に矛盾があるのかもしれない、と考え、患者さんと相談し、CTを撮影することにしました。
CT画像では、パノラマと同様、左上顎洞底線が消失しているところは、骨ではなく何か別のものに置き換わっているようでした。
それから、左上顎洞内は矢印で指しているように、モヤモヤとしており、不透過像が亢進しています。
私では、なかなか診断ができないため、患者さんの同意をとって、左上顎洞の精査を総合病院にお願いしました。
結果、現在、悪性腫瘍かどうか精査中です。
症例によってはCTから得られる画像情報が必要
患者さんの主訴である『歯肉に物があたると痛い』が、腫瘍の治療で改善するかどうか、根管治療で改善するのか否か、これから結果が出ることですが、最悪な事態を回避できたと思っています。
先日のブログで、根管治療でCTを撮影することは現段階で一般的ではない、とお伝えしましたが、この症例のように、最近では、CTから得られる画像情報を必要とする機会が増えていることも事実です。
被ばく量の問題が解決すれば、CTはいかなる疾患に対しても一般化する診断ツールの一つになるかもしれません。
患者さんが被爆する量よりもCTを撮影することで得られる利益が増した時、CTを撮影することができます。
ももこ歯科にはまだCTがなく、他院に撮影依頼をしていますが、今後も診断ツールの一つとして考えていきます。
患者さんにはご足労をおかけしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。