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根管があかなくても歯根の黒い影(膿)は治ります!

サイナストラクト(膿)・腫れ  / 院長ブログ

ももこ歯科のブログをいつも読んでいただきまして、ありがとうございます。今回のブログは、根管があかないと根の先の黒い影(膿)が治らないかどうか、というお話です。結論からいうと、根管があかなくても、根の先の黒い影(膿)は治ります。

黒い影の原因は?

レントゲンで根の先の黒い影(膿)ができる原因は、根管に感染した細菌が原因です。根管があかなくても、そこに細菌がいなければ根の先の黒い影(膿)は治ります。

石灰化している根管の治療経過

 

 

 

 

 

まず、実際の症例から見てみましょう。

79歳女性。右下の奥歯が痛いことを主訴に受診されました。

診査の結果、歯髄は壊死し、レントゲンでは根の先に黒い影(膿)がみえます(術前のレントゲン像 白い矢印)。白い矢印で指している歯の根管は3つあるのですが、1つは石灰化してあかない根管で、2つだけ根管治療しています。

術後2年9ヶ月経過しているレントゲンは右側で、歯根の先にある黒い影(膿)は消えて、なくなっています。

では、文献ベースで見てみましょう。Hasselgren*らは、51名の患者さんの石灰化した64歯根について、経過観察を2~12年行なった結果を報告しました。

根の先の黒い影(膿)があった16歯根中10歯根(62.5%)は膿がなくなり、根の先の黒い影(膿)がなかった48歯根中47歯根(97.9%)は膿がないままで、全体として、64歯根中57歯根(89%)が病気の再発や新たに病気ができることはありませんでした。

言い換えると、病気が治る確率は、石灰化している根管と黒い影(膿)がある場合は62.5%、石灰化している根管と黒い影(膿)がない場合は97.9%と、石灰化している根管と黒い影(膿)がある場合は低くなります。

*Hasselgren, Gunnar. “The prognosis for endodontic treatment of obliterated root canals.” Journal of Endodontics 14.11 (1988): 565-567.

石灰化している根管を開けないといけないか?

ここで考えるべきことは、石灰化している根管をなにがなんでも開けないといけないかどうかです。

通法通り、石灰化している根管を機械的拡大しようとすると、本来の根管とは異なる方向に拡大操作を行うことになりかねず、最悪の場合、人工的に根管を作って、歯根に穴を開けてしまい、新たに細菌の通り道を作ってしまう可能性があります。また、積極的な拡大操作をして根管を開けられたとしても、根の先の黒い影(膿)を100%治せるとも言い切れないのです。

術後に起こりうる偶発症の可能性と、石灰化したままの根管を温存していくかは、歯科医師の意思決定に依存します。

患者さんに知ってほしいことは、根管が石灰化しているからあかず、根の先の黒い影(膿)が治らないかもしれない、と主治医から説明を受けたとしても、上の症例のように治る可能性があることです。また、石灰化している根管があかず、根の先の黒い影(膿)が治らなかったら、外科的歯内療法で、治せる可能性があります。

根管があかないことを否定的に捉える必要はありません。一度ご相談いただければと思います。