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根管の中で折れたファイルをどうすればいい?〜ファイルを取らない時〜

院長ブログ

ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。

今回は、根管内で折れたファイルはどうすればいいかシリーズの、
ファイルを取らない意思決定についてです。

いつものように、実際の症例を挙げてお話しします。

患者さんは、43歳女性。
左上顎側切歯の根管治療をしているが、根の先までファイルが到達しないため、当院を受診された方です。

下の図は、CT画像です。根の先までファイルが到達しなかった理由は、口蓋側のトランスポーテーションでした。白い矢印で指している黒いところは、トランスポーテーションで、下図の左上矢印が指している黒いところの下のある小さな黒い穴は、オリジナルの根管です。

トランスポーテーション

下の図は、術前術後のレントゲンです。
術前のレントゲンで白い矢印が指す部分は、根の先までファイルが到達していないことを予測しています。CT画像で白い矢印で指していたトランスポーテーションにより、レントゲン上で根尖までファイルが到達していなかったのです。

トランスポーテーションの先には穿孔を起こしていたので、オリジナルの根管を清掃し穿孔部位は修復すれば、根尖性歯周炎は改善すると考え、根管治療を開始しました。

オリジナルの根管を穿通していた時、ファイルが根尖で折れました。術後のレントゲンで白い矢印は、折れたファイルを指しています。

ファイルを除去しなかった場合

このように、ファイルは折れたまま根管に残して治療を終えていますが、根尖部の黒い影は、術後7ヶ月の時点で縮小しています。

術後7か月

折れたファイルを除去しなかった理由

破折ファイルを除去する意思決定の要因として、このケースの場合、ファイルの上部が見えて、手前味噌ですが術者の経験はあり、道具も揃っているし、破折ファイルは細く短いし、除去はできたと思います。しかし、ファイルを除去しませんでした。ファイルを除去すると発生しうる合併症として根尖部に穿孔を起こしてしまう可能性があったのと、破折ファイルを除去しても作業長は変わらなかったからです。破折ファイルの除去をする際、ファイル周囲の歯質を削るので、穿孔が起こる可能性が高くなります。それから、ファイルを除去してもしなくても作業長は変わりませんでした。作業長とは、根管を拡大する際の長さです。たとえば、根尖から歯冠側まで18mmの時、作業長は17mmとなります。破折ファイルの長さは1mm程度です。よって、作業長はファイルを除去してもしなくても、このケースの場合は変わらないのです。

ちなみに、破折ファイル自体が感染を引き起こすことはありません。もし、術後に根尖性歯周炎を起こしたら、歯根端切除を行う予定です。
患者様には、以上のことを説明し、ご同意を得ています。現在も経過観察に通院していただいています。

次回のブログもお楽しみに。