レントゲンで歯根の先に膿がある原因は?パート2(歯根破折と穿孔について)
みなさん、こんにちは。
今回のブログは、レントゲンで歯の周りに黒い影(膿)がある時、治療開始前に診断が不可能で、治療を進めながら診断する病気は、歯内歯周病変以外に、歯根破折、穿孔もある、というお話です。
歯根破折は、歯の根っこがヒビ割れていること、穿孔とは歯や根っこに穴があいていることです。
では、実際の症例でみていきます。
図1のケースは、痛くてかめないことを主訴に、当院を受診された43歳男性です。
図1 左上レントゲンの矢印が、かむと痛みがある原因の歯です。歯根の周りに黒い影(膿)があり、骨がなくなっている状態です。
図1 右上の写真は、初診時のお口の中の写真です。
白い矢印で指す歯は、かむと痛みのある歯ですが、レントゲンでは黒い影(膿)の範囲は広いにもかかわらず、歯肉の腫脹はなく、見た感じ正常です。しかし、歯周ポケットが限局的に深く、歯内歯周病変か、歯根破折か、あるいは穿孔している可能性があることをお伝えしました。
下中央の写真は、かぶせ物をはずして歯の内部を顕微鏡で見たところです。白い矢印は、破折線を示します。
患者さんには、破折していることをお伝えし、抜歯しました。
次は、穿孔の症例です。
図2-1右の写真で、白い矢印で指している所がはれている、を主訴に、56歳女性が受診されました。
拡大してもよくわからないかもしれませんが、白い矢印で指すところは、しっかりと腫れていて、ニキビのようになっています。
ニキビに相当する歯周ポケットは5~6mmあり、その他は正常範囲内でした。
図2-2左のレントゲン写真は、ニキビからレントゲンに感光する材料を入れてみると、根の先にある黒い影(膿)に到達したことを示します。要するに、ニキビの原因は根の先にあったことを意味します。
ニキビの直接的な原因は、細菌です。
ここで問題となるのは、どこに細菌がいてニキビを作っているか、です。
ニキビの原因となっている細菌の居所として考えられるのは、根管か、穿孔もしくは破折、そして根の先に細菌が存在しているか、です。
それから、図2の症例の歯は、残存歯質量が少ないうえに穿孔や歯根破折の疑いがあり、これらは、将来的に歯をもたせるための条件が厳しいことを患者さんに説明しました。
患者さんは、今回のタイミングでは歯の保存をご希望されましたので、根管治療を行いました。
穿孔していた所は、全部で2ヶ所ありました。一つは、図2-2右の白い矢印で、もう一ヶ所は図2-2左のレントゲン写真の赤い矢印が指すところです。また、破折は認めませんでした。
それから、ニキビは根管治療中になくなりました。
根管治療は終了し、これから経過観察をします。
歯内歯周病変と同様に、歯根破折と穿孔も治療を開始すれば、診断ができます。
これらの診断は、レントゲンや諸診査のみでは困難です。
一般的に、治療前に病気の状態を診断します。
しかし、歯内歯周病変にしても、歯根破折や穿孔にしても、治療のステップを進めながら診断していくので、患者さんからしてみれば、術前にご自身の病状をはっきりさせられないのは不安なことでしょう。
しかし、『病気が治る』=『歯をもたせる』という公式は、すべての症例にあてはまりません。
病気の直接的な原因は細菌で、細菌を除去できれば、病気が治る可能性は高くなります。
ただし、病気の間接的な原因で、歯根破折や穿孔が存在すると、病気は治りにくくなります。
一方で、残存歯質量が少ない歯に病気ができた時、病気は治せたとしても、歯をもたせることは難しくなります。
少ない残存歯質量を多くしたり、歯の薄い部分を厚くすることはどんな名医でも不可能だからです。
それから、歯根破折があると、根管治療をしても破折したところから細菌が漏れるために、病気を治すことはとても難しいです。
この辺りは、理解に苦しむ話になりそうですが、担当歯科医師がきちんと説明して、患者さんにご理解していただくことが必須です。
患者さん御自身がどうしたいか意思決定ができるように情報提供をすることが、歯科医師の仕事です。患者さんの主訴を十分理解し、主訴にフォーカスをあてた説明をすることが、とても大切です。
次は、痛みのお話になります。
お楽しみに。