ウレシカッタコト
2015年2月の初診以来、ずっと通院していただいている患者さん。
主訴は、入れ歯を入れたけどかめないし、ずっとおかゆばかり食べていて、1ヶ月で3kgも痩せてしまった、と。
患者さんとしては、この状況をあきらめずになんとか脱出する方法はないか、というご相談でした。
図1は、初診時の口腔内写真です。
確かに重度の歯周病です。
奥歯の噛み合わせを失い、徐々に上の前歯がグラグラしてきて、前に飛び出ているような感じでした。ご本人も以前はこんなに出っ歯じゃなく、いつの間にか唇が閉じられなくなっているので、見た感じがすごく気になるので、いつもマスクをしている、とのことでした。
図2は、歯周基本治療後の写真です。
歯肉になんとなく艶がでてきて、みずみずしさを感じます。
しかし、まだ患者さんの主訴である食事を不自由なく食べる、というレベルにはなっていません。 さらには、見た目の問題として、上顎前歯は開き、以前より改善はしているものの、まだ出っ歯傾向にあります。
歯周基本治療後に、義歯を入れてかみ合わせをあげました。
理由は、奥歯のかみ合わせが失われた結果、上顎前歯が下顎前歯に突き上げられて、出っ歯になってしまったからです。
下顎前歯も、上顎前歯の出っ歯が改善する見込みで、仮歯に置き換えました。
すると、歯周基本治療後までは開いていた上顎前歯が、閉じてきて、出っ歯も改善しました。
患者さんは、この時点で非常に満足され、食事も摂れるようになり、上顎前歯の出た感じも良くなったので、マスクをしなくなった、とのことでした。
歯周病の患者さんは、奥歯の噛み合わせを失ったことが原因で、噛み合わせの位置が、本来よりも低くなっていることがほとんどです。安定した噛み合わせを作ることにより、食事が摂れるようになります。
この後、歯周外科治療(エムドゲイン)も行いました。
図4は、歯周外科後1年の口腔内写真です。
かみ合わせを上げたため、前歯の感じが図3の状態よりも良くなっています。
ただし、この時点での問題は、上顎に入っている入れ歯をひっかけている歯が徐々にグラグラしてきて、いずれ1本ずつ抜歯する運命にあるかもしれないことでした。
そこで、患者さんと相談し、上の前歯を半分ずつ連結したのが、図5の口腔内写真です。
上顎前歯のグラつきをかぶせもので連結したために、抜歯するタイミングを多少なりとも延期できたと思います。
図5は、2017年4月現在のものです。
初診から2年と少しの間ですが、ずっと通院していただいています。
現在も月に1度のメンテナンスはかかさずにいらっしゃっている患者さんに、脱帽です。
治療のプランをたてるのはもちろん歯科医師の仕事ですが、患者さんの本気で治そうという強い気持ちがあれば、結果が出せるし、病状も改善します。
この患者さんは、初診時の状況を諦めたくない、絶対に治したい、という“本気”の気持ちがあったからこそ、ここまで来ることができました。
治療の結果が出る期間は個人差があります。しかし、この方は、私の想像以上に早い結果を出すことができました。ご自身の病状を受け止めて、“本気”の気持ちがあったからでしょう。
これからも、もっと良くなることを患者さんと二人三脚で考えていきます。