根管治療を失敗させない=成功させる条件 その7 根管充填について
ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。
根管治療を失敗させない=成功させる条件も終盤に入ってきました。
今回のお話は、根管充填についてです。
根管充填は、きれいになった根管をどうやって維持していくかが目的です。
そのために行うことは以下の通りです。
⑴ 根管の 細菌を埋葬する
⑵ 根管に細菌を入れさせない
⑴と⑵をそれぞれ説明します。
⑴ 根管の細菌を埋葬する
埋葬というと、なんだか仰々しいですが、簡単に表現すると、根管内の細菌を根管外に出さないことです。
以前からお話ししているように、根管の解剖は非常に複雑です。
図1左は、歯の詳細を示します。
ベージュ色のところは象牙質と言いまして、白い線は象牙細管という筒状の組織です。
細菌が象牙細管に侵入すると(図1右(Armitage(1983))、細菌を取り除くことは現段階では不可能です。
よって、根管充填は、根管に残っている細菌を外に出さない=埋葬することを目的とします。
⑵ 根管に細菌を入れさせない
以前のブログにも書いたように、『根管に細菌を入れさせない』とは、『根管を封鎖する』と同義です。
根管を封鎖する代表的な材料は、ガッタパーチャとMTAです。
ガッタパーチャとMTAの使い分けは、根尖部の封鎖がガッタパーチャでは難しいとき、MTAを使います。
図2の症例は、34歳男性です。
「右下の歯が月に1度は腫れて痛む」と、ももこ歯科を受診され、右下顎第二大臼歯を根管治療しました。
右下顎第二大臼歯の遠心根の根尖部から、浸出液が大量に根管へ流入していました。
患者さんが気になっていた『月に一度は腫れて痛む』症状と、根管治療中の『根尖部から浸出液が大量に根管へ流入している』は、リンクしています。
浸出液が流入してくるような湿潤した環境で根管を封鎖するのは難しいため、MTAで根管充填しました。
右下顎第二大臼歯近心根は、乾燥している環境で根管を封鎖できましたし、根尖部の拡大を適正にできたから、ガッタパーチャで根管充填しました。
MTAは、水と反応しながら固まってくれる材料です。
根尖部が湿潤していても、MTAは硬化するので封鎖性が良く、ガッタパーチャよりは根管充填の目的を果たしてくれる可能性が高いです。
だからといって、いつでもどんな時でもMTAで根管充填する必要はありません。
適材適所で材料を選択しながら根管充填を行います。
根尖性歯周炎の予防と治療に貢献するのは、根管充填よりも前に行う無菌的処置の方が大切です。
次回のお話は、支台築造についてです。
お楽しみに。
Armitage, Gary C., Mark I. Ryder, and Samuel E. Wilcox. “Cemental changes in teeth with heavily infected root canals.” Journal of Endodontics 9.4 (1983): 127-130.