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2020.6.14

穴があいてる歯は治るか?

ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。

先日いらした患者さんから、「穴があいてる歯を抜歯しなければいけないか」とご相談があり、今回のブログのテーマにします。

歯に穴があいてることを穿孔もしくはパーフォレーションperforationと言います。穿孔の理由は深い虫歯を取ろうとして穴があいてしまうことが多いです。穿孔の好発部位は、下の図『歯肉界隈の穿孔ってどこ?』の青い楕円で囲ってあるところです。

歯に穿孔がある場合でも、抜歯の必要はありません。
抜歯の判断基準は、あくまでも健康な歯の部分がどのくらい残っているかかぶせ物をしても耐久性がある歯なのかどうか、それから歯根破折があるかどうかです。穿孔していても、健康な部分が多く残っている歯を抜歯する必要はありません。

ただし、せっかく穿孔部位を修復してもどのくらいもつのか心配なところです。
そこで、今日のブログは、歯に穿孔がある場合、治療後の経過に影響する要素と、穿孔を修復後症状は改善するかをお話しします。
ちなみに、穿孔しているところの治療は根管治療の途中で行ないます。根管治療とは別に穿孔の治療をすることはありません。

歯に穿孔がある場合の症状

患者さんが感じている症状は、痛い、腫れてる、歯肉にできものができている等々で、根尖性歯周炎の症状とほぼ同じです。

穿孔の治療の予後に影響する4つの要素

歯に穿孔があっても、成功するかどうかは4つのポイントが好条件であれば、良くなる可能性があります*。

1.封鎖

穿孔している部位の修復には、封鎖が最も重要なキーポイントになります。現在、MTAやバイオセラミックといった封鎖性が非常に良好な材料がありますので、心配いりません。しかし、この材料の特性を最大限発揮してもらうためには、穿孔しているところの肉芽掻爬と止血をきちんと行うことが非常に重要です。穿孔の封鎖がうまくできれば、深かった歯周ポケットの改善を期待できます。

2.時間

穿孔した直後に修復できれば治療の成功率は一番高くなります。穿孔してから時間がたつほど、成功率は低くなります。理由は、穿孔してから修復するまでの時間が長く経過すると、穿孔部位が細菌に感染するからです。穿孔した直後であれば細菌感染はほとんどありませんから修復して良くなることが多いです。
フレッシュな状態で穿孔を修復した方が、治療後好ましい結果を期待できます。しかし、穿孔から時間が経過していてもあきらめることはありませんから、歯科医師に相談してみると良いです。

3.場所

一般的に、根尖部と根管中央部の穿孔修復は予後が良いです。しかし、歯肉界隈の穿孔の場合、歯周病に罹患しやすくなり、治療をしても結果が伴わないことがあります。

歯肉界隈とは、図の青い丸で囲ってあるところです。青い丸より下(根尖方向)にいけばいくほど穿孔修復は良好な予後を期待できます。
皮肉なもので、穿孔が起こる好発部位は歯肉界隈が多く歯周病に罹患しやすいため、一度歯周病になってしまった穿孔がある歯を治療しても、症状は改善しないことがあります。しかし、症状が改善するかどうかは、治療をしてみなければわかりません。ケースバイケースですが、穴があいているからと言ってすぐに抜歯という意思決定は時期尚早な気もします。

4.サイズ

穿孔のサイズは小さいほど治癒しやすいです。
穿孔のサイズが小さいと、歯周組織と歯の内部が交通している面積が小さいので歯周組織に対するダメージが最小限で済み、治癒しやすいのです。
穿孔の大きさと場所は、CTで確認できます。

同一患者さんのレントゲンとCT画像です。左のレントゲン上、穿孔があるかどうかは歯科医師であればわかると思いますが、患者さんに、『ここが穴です』と指をさしてお話ししても、『はぁ…』という感じで良くわからないと思います。しかし、右のCTだと、矢印で指しているところが穿孔部位だと一目瞭然です。次に穿孔がある場合とない場合でCTを比較してみます。

異なる患者さんで、同一歯のほぼ同じ面でスライスした際のCT比較です。
穿孔ありとなしの場合では、明らかに異なることがわかると思います。
穿孔ありの矢印は実線で、穿孔なしの矢印は点線です。

ここまでくればもうおわかりですね🤓
穿孔を修復して長期的に良好な経過を期待できる条件は、
穿孔が発生した直後に
歯周病を合併しにくい場所で発生した
小さな穿孔を
きちんと封鎖する

ことです。

穿孔してある歯が治るってどういう状態?

まずは、患者さんが気になっている症状を取ることが第一優先です。
しかし、治り続けることが一番重要です。そのために、歯科医師は歯周ポケットを計ったり、レントゲンを撮ったり、いろいろな検査をします。その結果、良くない所見があれば、患者さんが気になっている症状の再発を予測します。痛みや腫れが治っていたとしても一時的なものかもしれない、と患者さんにお伝えすることができるのです。痛みと腫れが治ったからといって、必ずしも病気が治ったわけではありません。長期的な目線でその歯の行く末を予測することは歯科医師の役割です。
定期的な観察は非常に重要です。
痛みなどの主観的な症状は患者さんご本人だけがわかることですが、客観的な症状として穿孔している歯が今後どうなっていくかの判断は、歯科医師に委ねた方がいいです。患者さんの判断による治療や定期的な観察を中断はやめた方がいいです。

まとめ

穿孔した歯を修復した後、良好な経過を期待できる要件は、穿孔部位の封鎖、穿孔してから経過した時間、穿孔の大きさと場所です。
穿孔を起こしても、時間がそれほどたっておらず、歯肉界隈から遠い場所で小さな穿孔であれば適切な封鎖をできることが多く、症状の改善を見込めて治癒する可能性は高いです。穿孔している場所が歯肉界隈で、穿孔のサイズが大きく時間が経過していても、残念がることはなく治療をチャレンジしてみるかどうか、歯科医師と相談して決めるといいです。患者さんにとって、いろんな道筋がたてられて、今後の歯科治療に対しての価値観や意思決定が変わるいい機会だと思います。

次回のブログは、実際の穿孔修復した症例についてお話しします。
お楽しみに。

*参考文献
Clauder, T., & SHIN, S. J. (2006). Repair of perforations with MTA: clinical applications and mechanisms of action. Endodontic Topics, 15(1), 32-55.

 

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