TOPへ

ブログ

歯髄は残せるか?残せないか?診査診断の大切さ〜歯髄炎編①〜

根管治療  / 歯髄炎  / 院長ブログ

ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。

今回のブログは、診査診断の大切さ、歯髄炎編です。
歯髄炎とはどういう病気か、詳しく知りたい方は、『歯が痛い!原因は“歯”の場合〜虫歯と歯髄炎編〜を読んでいただきたいです。

歯髄炎は、虫歯が進行すると起こる病気です。 一般的な症状として、冷たいものに痛みがある、ズキズキとした痛みがある、何もしなくても痛い時がある、等々です。

今回は、ある症例をももこ歯科受診前の状態から受診後治療方針が決定するまでを時系列でお伝えしたいと思います。
前回のブログでお話しした通りの流れで診査診断し、治療方針を決定します。

問診

44歳 女性

主訴:左上の歯でアイスを食べると痛い、甘いものを食べると痛みがある

現病歴:
2012年頃   左上大臼歯の治療をした
2017年ごろから左上で冷たいものと甘いものを食べると痛みがあり、治療をした方がいいと思い、
2019年6月7日 ももこ歯科を受診した

診査・診断

患者さんは痛みのある部位を左上と特定していますが、左下も『アイスを食べると痛い』ところかもしれない、という予測を立てて診査をします。

患者さんは冷たいもので痛みを感じていますから、冷たいものを歯に当てて痛みの再現をします。その結果、痛い歯は左上顎第一大臼歯(左上6)と左上顎第二大臼歯(左上7)の2本になりました。2本同時に同じ症状を訴えることはまずないので、ストリップスというフィルムのようなものを歯の間に挟んで診査をしてみました。

図の右がストリップスで、ストリップスを挟んだところは、左のお口の中の写真の白い線のところです。

左上6と7は銀歯が入っていて、銀歯で接触しているところがあります。そうすると、銀歯を通じて左上6の反応が左上7に伝わり、症状が混乱することがあります。そこで、銀歯に対して絶縁体の役割を担うように、ストリップスを歯の間に入れました。最終的には、左上6と左上7の反応はまったく異なり、『アイスを食べると痛い』歯は、左上顎第二大臼歯(左上7)だとわかりました。

では、銀歯がかぶっているということは、以前虫歯の治療をしたことがある歯です。なぜ、痛みが出てきているのか、歯は一体どうなっているのか、レントゲンで確認します。

左右のレントゲンはX線の入射角度が異なりますので、歯の内部の見え方が変わります。より多くの情報を得たいので、ももこ歯科では異なる撮影方法でレントゲンを撮影しています。

銀歯の下にはセメントがあります。セメントで埋めた方が良いくらいの深い虫歯があったのではないか、さらには、歯髄は狭くなっており、虫歯からの攻撃を歯が守っていたのではないかと考えます。

診断は、
歯髄:症状がある不可逆性歯髄炎
根尖周囲組織:正常

上記により、歯髄を残しても『アイスを食べた時に痛い』という症状は改善しないと判断し、根管治療を行いました。

根管治療後の経過

患者さんは、治療後『アイスを食べた時の痛み』はなくなりました。

根管治療後2年程度までは経過良好です。

まとめ

診査診断の重要さをご理解いただけましたでしょうか?診査の時にストリップスを歯の間に入れていなければ、どの歯が痛いか診断できませんでした。

個々の歯の反応を診るために、診査の工夫をすることは大切であることは言うまでもなく、一つ一つを疑って診査して、診断が難しければその日のうちに結論は出さず、しばらく時間が経過してからあらためて診断(待機的診断)をすることもあります。患者さんにはご足労をかけますが、診断を誤らないために診査は重要な診療行為だと考えています。

次回も、歯髄炎編が続きます。
お楽しみに。