レントゲンで、歯根の周りに膿がある原因は?パート1(歯内歯周病変について)
みなさん、こんにちは。
今回のブログは、レントゲンで歯の周りにある黒い影(根尖性歯周炎)の原因を特定することが難しい病気= 歯内歯周病変についてお話しします。
歯内歯周病変とは?
歯の根の周りに炎症があって(根尖性歯周炎)、歯周病も併発している状態で、腫れた、痛い、かむと痛い等々、根尖性歯周炎と同様な症状を認めます。
診査をすると、根尖性歯周炎の場合は歯周ポケットが正常範囲内ですが、歯内歯周病変の場合は歯周ポケットが4〜5mm以上あります。鑑別診断として、歯根破折あるいは穿孔(歯のある部位に穴があいている)があります。治療中に歯根破折や穿孔がなければ歯内歯周病変と診断します。
歯内歯周病変の起源は2つあって、一つは根尖性歯周炎、もう一つが歯周病です。歯内歯周病変の原因が根尖性歯周炎か、歯周病か、あるいは両方かは、歯内療法を行った後に診断できます。
治療法は、歯内が原因(根尖性歯周炎)であろうと、歯周(歯周病)が原因であろうと、まずは歯内(根尖性歯周炎)の原因を除去するために根管治療を行うことは鉄則です。根管治療後歯内歯周病変が治癒していなければ外科的歯内療法を行い、それでも治癒していなければ歯周病の治療を行います。
歯内歯周病変の治癒の判断基準は、まずは患者さんの主訴が解決していること、たとえば、痛みがない、腫れは気になっていないかなどを患者さんに確認します。そして、解決した主訴が継続してくれるかどうかを確認するために、歯科医師は診査をしたり、画像の所見から判断します。歯根の周りの黒い影が小さくなっていて、なおかつ歯周ポケットが浅くなっていると将来を期待できると思います。
症例検討
68歳男性。
主訴は、痛みはないけれども右下の歯肉が腫れている、とのことでした。

腫れている歯は、図1-1左上下口腔内写真黒い矢印で指しています。
図1右側のレントゲンの白い矢印が腫れている歯で、歯を囲っている黒い影の原因の特定をするために、諸検査を行いました。
歯髄は壊死しており、根尖と歯周組織の診査を行ったところ、頬側中央の歯周ポケットが限局的に11mmと深く、歯はグラグラ揺れている状態です。
以上より、考えられる歯肉腫脹の原因を以下に記します。
1. 歯髄が壊死しているので、歯周組織に感染が広がって歯肉が腫れ、歯内歯周病変を起こしている可能性
2. 歯周ポケットが11mmと深く歯がグラグラ揺れているために歯周病が原因で歯髄が壊死し、歯肉が腫れている可能性
3. 歯周ポケットが限局的に深いため、歯根破折あるいは穿孔の可能性
根管治療を行った結果、歯肉の腫れは引いて、11mmあった歯周ポケットは3mmと改善し、歯もまったくグラグラしなくなりました。

この症例の歯肉が腫れていた原因は、歯髄が壊死していたため歯内でした。
レントゲンで歯の周りが真っ黒で、ポケットが限局的に深い場合、疑われる病気は、歯内歯周病変の他に、前回のブログでもお話ししたように、歯根破折や穿孔(歯や根に穴があいているところ)の可能性も考える必要があります。
つづきは、次回のブログでお話しします。
おたのしみに。
