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2017.10.16

歯が痛い!原因は“歯”の場合〜歯髄壊死編〜

みなさん、こんにちは。いつも、ももこ歯科のブログを読んでいただきまして、ありがとうございます。

歯の痛みシリーズ3回目は、歯髄壊死についてです。歯髄壊死になると、痛みは歯髄炎よりも強い傾向にあるようです。

どんな歯の痛みが歯髄壊死なのか

最初は、冷たいものや温かいものに痛みを感じていたけれども、ここ数日は温度で痛みを感じることはなく、ズキズキとした痛みが何もしていなくても現れる、あるいは、冷たいものや温かいものに痛みを感じることはなく、ズキズキとした痛みがある。

つまり、何もしなくても痛む(自発痛といいます)場合が多いようです。また、歯髄壊死になると、前回お話した歯髄炎の時よりも、痛みが強い傾向にあります。

Nussteinらは、323名の患者さんに、痛みが出てから受診までの日数を調査した結果、歯髄壊死の患者さんは4日、歯髄炎の患者さんは9日だった、と報告しました(1)

これは、歯髄壊死は歯髄炎よりも、痛みが強いことを意味します。

それから、歯髄壊死の場合、歯の根の外に炎症反応が広がることがありますので、かむと痛かったり、歯肉が腫れることもしばしば認められます。

歯科医院受診前にどんな応急処置が必要か

患者さんは、歯の痛みがあっても、痛みの原因を特定することは難しいので、早く歯科医院を受診して、適切な応急処置を受けることが一番確実に痛みを取る方法です。

しかし、忙しくて歯科医院を受診する時間をなかなか確保できないのであれば、歯髄壊死の場合も、鎮痛剤を飲むことで痛みを鎮めることができるかもしれません。
しかし、痛みが強いと、鎮痛剤を飲んでも、期待するほど痛みは治まらないこともあるようです。

それから、抗生剤の併用は、鎮痛効果を期待しない方がいいです(2)理由は、歯髄壊死は細菌感染で起こる病気ですが、壊死を起こしている組織には血管が存在しません。内服した抗生剤は、血液を介して全身に運ばれますから、血管が存在しない組織には、なにも効果をもたらしません。

歯肉が腫れている歯髄壊死の場合も、血流がある歯肉までは抗生剤の効果を期待できますが、痛みの原因である壊死を起こした歯髄までは到達できません。

とりあえず鎮痛剤を飲んで痛みを抑えるのは、本当に短期目標にした方がいいです。歯髄壊死は、細菌感染症で歯根の外に炎症が広がっていることが少なくなく、鎮痛剤を飲んでしばらく痛みを耐えしのいだ結果、細菌が全身に回ってしまうより、早く歯科医院を受診し、軽症な時に早く確実に治した方が、健康な体を早く確実に取り戻すこともできます。

歯科医院での応急処置はどんな処置?

歯髄壊死で痛みがある場合、根管治療を行うと、嘘のように痛みが取れます。

勤務医だった頃、歯が痛くて朝目が覚めた、と知人から連絡があり診察をしたところ歯髄壊死だったので、根管治療を行いました。そのあと、痛みがスーっと取れた、とのことでした。

その知人も痛みから解放されて嬉しいでしょうし、私も朗報を受けて、とても嬉しかったことを覚えています。では、実際の症例でみてみましょう。

84歳男性。

何もしなくても痛くて、歯肉も腫れている、押しても痛い、を主訴にももこ歯科にいらっしゃいました。痛いところを指で指してもらい、腫れているところを押すと痛みがあり、コンコンと歯を叩いて一番痛みがある歯を特定後、周囲の歯も診査の対象とし、レントゲンを撮影したところ、図1左のレントゲン写真の白い矢印で指しているところは、黒い影があります。

診断は、歯髄壊死で歯根の先にも炎症があったので、応急処置も兼ねて、根管治療を行なったところ、図1右の写真の矢印で指しているように、根管から膿がドクドクと出てきました。

患者さんは、痛みが引いて随分楽になった、とおっしゃっていました。歯が痛くなった時、歯科医院で応急処置のみでもしてもらった方が、早く確実に痛みを引かせることができますので、早めの受診をお勧めします。

生活歯髄療法が適応ではない歯髄炎と歯髄壊死は、根管治療が必要になります。では、実際根管治療自体が痛い治療なのかどうか、次回のブログでお話しします。お楽しみに。

(1) Nusstein, John M., and Mike Beck. “Comparison of preoperative pain and medication use in emergency patients presenting with irreversible pulpitis or teeth with necrotic pulps.” Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology, and Endodontology 96.2 (2003): 207-214.

(2) Fouad, Ashraf F., Eric M. Rivera, and Richard E. Walton. “Penicillin as a supplement in resolving the localized acute apical abscess.” Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology, and Endodontology 81.5 (1996): 590-595.

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