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2018.2.6

被せ物がすぐ取れてしまう原因は、歯のひび割れだった!?

いつも、ももこ歯科のブログを読んでいただき、ありがとうございます。今回は、被せ物がしょっちゅう取れる原因が、歯のひび割れかもしれない、というお話です。

なぜ被せ物が取れてしまったか

取れた被せ物を歯科医院に持って行き、つけてもらったのに、何度も取れる、とおっしゃって患者さんがいらっしゃいます。まずは、なぜ被せ物が取れてしまったか、原因を考える必要があります。

被せ物と歯をくっつけているセメントがなくなってしまったのか、かみ合わせが原因で取れてしまったのか、新たに虫歯ができて合わなくなってしまったのか、等々です。かぶせ物をつけたばかりなのに、すぐ取れてしまうのは、セメントがなくなっているからとは考えにくいです。

また、かみ合わせが原因でかぶせ物がすぐとれてしまうことは、そのかぶせ物を一番最初につけたばかりの時に取れているはずです。新たに虫歯ができて合わなくなってしまっているのであれば、虫歯を治して新しいかぶせ物を作れば解決します。

ひび割れが原因かも

これらの原因を検討しても特定できず、つけたばかりの被せ物がたびたび取れてしまうのは、ひび割れが原因かもしれません。

取れた被せ物をつけても、ひび割れの部分が動いてしまい、すぐに取れてしまうのです。ひび割れは、拡大鏡でわかる場合もあれば、マイクロスコープを使ってやっとわかる場合もあります。肉眼で確認することは、なかなか難しいでしょう。以前のブログでもお話ししましたが、ひび割れの確定診断は、拡大しようが肉眼であろうが、見て確認することです。

実際の症例でみていきます。

症例1は、33歳女性。「被せ物が取れて、つけてもらったばっかりなのに、すぐ取れてしまう。根の先にある膿を治せばかぶせ物はしっかり入るのではないか」というご相談でももこ歯科にいらっしゃいました。まず、根の先にある膿の原因は、根管に細菌がいる場合もありますが、根管以外のところから細菌が入り、根の先に黒い影として偶然映し出されることがあります。

症例1の右レントゲンの白い矢印で指された歯の根の先にある黒い影の原因は、細菌が根管にいるから、あるいは根管以外にいる場合と、両方考えられます。

マイクロスコープひび割れを確認でき、レントゲンでも黒いスリットのような線でひび割れを確認できました。また、症例1の左下の写真は、歯周ポケットを測っていて、ひび割れに相当する歯周ポケットのみが深いことを示します。歯周ポケットが限局的に深いと、ひび割れが疑われ、症例1の場合、ひび割れが根管の表面のみに存在するのではなく、歯肉側にも連続してあることが予測されます。

図1右に、歯の根の断面図を簡単に示します。ひびは、図1右の黄色い線のように、歯根の厚み全域に広がるのではなく、部分的に存在し、破折は歯根の厚み全域に広がる場合をいいます。ひび割れが存在すると、部分的であればまだ保存できることはありますが、図1右側の黒い破折線のようであれば、抜歯が適応になることがほとんどです。

患者さんは、ひび割れがあるとは知らず、根管治療を行えば、黒い影が治りかぶせ物がしょっちゅう取れることもなくなる、と考えていたようですが、この歯の場合、ももこ歯科では抜歯が適応となりました。
ひび割れが原因でかぶせ物が取れてしまうこと、根管治療で根の先にある黒い影を治すことができたとしても、ひび割れから細菌が入り込み、また黒い影を作ってしまうかもしれないこと、新たにかぶせ物をかぶせられたとしても、今回のようにひび割れが原因で、たびたびかぶせ物が取れてしまうかもしれないことを患者さんにお伝えしました。

ひび割れが原因で、抜歯になることは、患者さんにとっても歯科医師にとっても、残念なできごとです。歯の根のひび割れは、歯内療法を行なった後の方が、歯内療法を行なっていない歯よりも、多く見られます。頻度としては、Sjögrenらの報告によると、8〜10年の経過観察中に確認が取れた歯の根のひび割れは、635歯中21歯です(1)

歯内療法を行なった歯の方が、歯内療法を行なっていない歯よりも歯の根のひび割れが多くなる理由について、議論を呼ぶところではありますが、日を改めてお伝えします。

やはり、歯髄保存は大切です。歯髄が保存されていれば、ひび割れから抜歯になる可能性はずいぶん低くなります。歯髄があれば、歯のもちも良くなります。ずっと自分の歯で食べられれば、食事は不自由なくおいしいし、楽しい時間になるはずです。
一度、みなさまも、歯から考える健康として、歯髄を保存する意識をもってみませんか。

(1) Sjögren, U. L. F., et al. “Factors affecting the long-term results of endodontic treatment.” Journal of endodontics 16.10 (1990): 498-504.

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