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歯のかぶせ物の重要性(根管治療後のかぶせ物についてpart3)

根管治療  / 根管治療後のかぶせもの  / 院長ブログ
ももこ歯科のブログを読んでくださっているみなさま、お変わりないでしょうか?
いつもありがとうございます。
毎日暑い日が続きますね。どうぞご自愛ください。
前回のブログでは、根管治療後のかぶせ物はフィット感がいい物をおすすめする、とお話ししました。
今回のブログでは、根管治療後にかぶせ物をかぶせないままでいると、歯を抜くことになるかもしれない、というお話です。

歯にかぶせ物をする目的とは?

歯にかぶせ物をする目的は、歯の形態回復、機能改善、唾液による感染予防も含まれます。

Salehrabiら*は、アメリカの保険会社で1995-2002年の間に集計された、根管治療後の1,462,936歯の予後調査を行いました。

根管治療を行ったにも関わらず、残念ながら抜くことになった41,973歯のうち、かぶせ物をしていなかった歯は、なんと!35,697歯(85%)という驚異的な結果でした。

抜くことになった歯を歯種別にみても、かぶせ物をしている歯よりもかぶせ物をしていない歯の方が、前歯部で4.8倍小臼歯部だと5.8倍大臼歯部で6.2倍だったという結果でした。

アメリカ国民は民間の保険会社に加入しているものの医療費が高く、痛みを根管治療で取った後、かぶせずにそのまま放置することがあるようです。

この結果から、かぶせ物をしないと、抜歯になる可能性が高くなるのか?という疑問が浮上します。

かぶせ物がなければ、その歯を機能させることは不可能ですから、歯はヒビ割れを起こしにくくなり、その分長もちしそうな気がします。Salehrabiら*の報告には抜歯理由の記載がないので、35,697歯の抜歯理由を探ることはできませんが、ここからは私の考えです。

かぶせ物をしないままの歯は、形態回復をせず唾液に暴露され、感染を起こし、虫歯となり抜歯になったのではないか、と推測します。

日本人の場合、かぶせ物を入れるまできちんと通院する患者さんが多い、ただしこの背景には国民皆保険という制度があり、アメリカのような統計結果は出ないかもしれません。

かぶせ物をつけるタイミング

歯内療法(生活歯髄療法根管治療)が終わって、最終的なかぶせ物を入れる時期は、可及的に早いほうがいいですが、仮歯で様子を見ることもあります。

まず、可及的に早いほうがいい理由は、ルールに則った根管治療を行なった後、再感染させないために、最終的なかぶせ物を入れる時期は早ければ早いほど好ましいです。

当院では治療後2週間以内に、最終的なかぶせ物を入れられるように配慮しています。

一方で、治療後は仮歯で3ヶ月間経過観察をすることがあります。2つあって、1つは根尖性歯周炎がある歯、もう1つが第二大臼歯を治療した時、治療後仮歯を入れて3ヶ月間経過観察をももこ歯科では行います。
理由についてです。根尖性歯周炎がある歯は根管治療後治癒するかどうかの見極めが必要です。第二大臼歯を根管治療した後に外科的歯内療法を行う場合、意図的再植術が第一選択になります。最終的なかぶせ物を入れてしまうと、意図的再植術で第二大臼歯を抜歯する際、かぶせ物がわれてしまうことを避けるために、仮歯で経過観察します。

また、経過観察する3ヶ月の根拠は、歯根の先に膿、あるいは黒い影のサイズの変化が最短で3ヶ月するとレントゲン上わかるようになる、と言われています。根管治療後3ヶ月で、根尖性歯周炎が治癒傾向を認めれば、最終的なかぶせ物の型取りを予定します。

歯内療法(生活歯髄療法根管治療)後の歯を経過観察する場合は、感染を予防するために、必ず仮歯をかぶせることが重要です。

かぶせ物をしないと起こる事態とは?

 

 

41歳の女性の下顎の状態です。

 

初診時は、矢印の歯肉が腫れて痛かった、という主訴でももこ歯科に受診された患者さんです。

ずいぶん長い間放置していたようで、虫歯が深く進み抜歯となりました。

この歯は、根管治療をしてはいませんが、虫歯になってから放置している時間が長ければ長いほど、それから、かぶせ物が取れたまま放置している時間が長いほど虫歯は進行します。

根管治療後にかぶせ物をしないままでいると、この状況と同じことが起こります。

かぶせ物の目的は、虫歯で歯がなくなった部分の形態回復をして、唾液による感染を防ぎ機能回復も同時に再開させることです。

治療は中断することなく、コンプリートすることが大事です。

歯内療法後のかぶせ物についてまとめると、以下の通りです。

  1. 可及的に早くかぶせる
  2. フィット感がいいかぶせ物を入れる
  3. クラウンをかぶせる
  4. 最終的なかぶせ物をある条件がクリアされるまで入れられない場合は、仮歯で経過観察をする

次回のお話は、歯が治った、の意識が患者さんと歯科医師の間でギャップがあることをお話しします。

*Salehrabi, Robert, and Ilan Rotstein. “Endodontic treatment outcomes in a large patient population in the USA: an epidemiological study.” Journal of endodontics 30.12 (2004):846-850.