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- 2018.7.26
歯のかぶせ物の重要性(根管治療後のかぶせ物についてpart3)
いつもありがとうございます。
毎日暑い日が続きますね。どうぞご自愛ください。前回のブログでは、根管治療後のかぶせ物はフィット感がいい物をおすすめする、とお話ししました。
今回のブログでは、根管治療後にかぶせ物自体をかぶせないままでいると、歯を抜くことになるかもしれない、というお話です。
歯にかぶせ物をする目的とは?
歯にかぶせ物をする目的は、虫歯でなくなってしまった歯の形態回復をすることで機能回復させるだけでなく、唾液による感染予防も含まれます。
Salehrabiら*は、アメリカの保険会社で1995-2002年の間に集計された、根管治療後の1,462,936歯の予後調査を行いました。
根管治療を行ったにも関わらず、残念ながら抜くことになった41,973歯のうち、かぶせ物をしていなかった歯は、なんと!35,697歯(85%)という驚異的な結果でした。
抜くことになった歯を歯種別にみても、かぶせ物をしている歯よりもかぶせ物をしていない歯の方が、前歯部で4.8倍、小臼歯部だと5.8倍、大臼歯部で6.2倍も多かったようです。
この報告は、アメリカの先生が書いています。アメリカ国民は、民間の保険会社に加入しているものの、医療費が高いためかぶせ物までできず、根管治療で痛みが取れた後、放置することがしばしばあるようです。
この結果から、かぶせ物をしないと、抜歯になる可能性が高くなるのか?という疑問が浮上します。
しかし、かぶせ物がなければ、その歯を機能させることは不可能ですから、歯はヒビ割れを起こしにくくなり、その分長持ちしそうな気がします。と考えると、Salehrabiら*の報告と矛盾が生じます。
歯にかぶせ物をする目的は、虫歯でなくなった部分を形態回復させ、機能も回復させることです。
それから、歯内療法(生活歯髄療法、根管治療)を行なった歯は、唾液に暴露させてはなりません。
せっかく無菌的処置で、歯にいる細菌を減らし、病気が改善したのに、細菌を運ぶ唾液に暴露させては瞬く間に歯が感染してしまいます。
Salehrabiら*の報告には、抜歯理由の記載がないので、35,697歯の抜歯理由を探ることはできませんが、ここからは私の考えで、かぶせ物をしないままの歯は、形態回復をせず唾液に暴露され、感染を起こし、虫歯となり抜歯になったのではないか、と推測します。
日本人の場合、かぶせ物を入れるまできちんと通院する患者さんが多いので、このような統計結果は出ないかもしれません。
かぶせ物をつけるタイミング
歯内療法(生活歯髄療法、根管治療)が終わって、最終的なかぶせ物を入れる時期は、可及的に早いほうがいいですが、仮歯で様子を見ることもあります。
まず、可及的に早いほうがいい理由は、ルールに則った根管治療を行なった後、再感染させないために、最終的なかぶせ物を入れる時期は早ければ早いほど好ましいです。
翌日にでもかぶせられればいいのですが、現実問題としてそうはいかないことがほとんどだと思います。
当院では、2週間以内に最終的なかぶせ物を入れられるように配慮しています。
ただし例外がありまして、仮歯で3ヶ月間経過観察をすることがあります。
主に、第二大臼歯の根管治療後、外科的歯内療法を行う必要がある時、意図的再植術が第一選択になることが多いです。
患者さんが、第二大臼歯のかぶせ物にセラミックを選択している時、歯を鉗子でつかむので、セラミックがわれてしまいます。このようなできごとを防ぐために、3ヶ月間仮歯で様子を見ることがあります。
また、経過観察する3ヶ月の根拠は、歯根の先に膿、あるいは黒い影等々あった場合、歯根の先に膿や黒い影が治る、あるいは小さくなる、大きくなるのに最短で3ヶ月するとレントゲン上わかるようになる、と言われています。
かぶせ物をしないと起こる事態とは?
41歳の女性の下顎の状態です。
初診時は、矢印の歯肉が腫れて痛かった、という主訴でももこ歯科に受診された患者さんです。
ずいぶん長い間放置していたようで、虫歯が深く進み抜歯となりました。
この歯は、根管治療をしてはいませんが、虫歯になったのを放置している時間が長ければ長いほど、それから、かぶせ物が取れたまま放置している時間が長いほど虫歯は進行します。
根管治療後にかぶせ物をしないままでいると、この状況と同じことが起こります。
かぶせ物の目的は、虫歯で歯質がなくなった部分の形態回復をして、唾液による感染を防ぎ、機能回復も同時に再開させることです。
治療は中断することなく、コンプリートすることが必須です。
歯内療法後のかぶせ物についてまとめると、以下の通りです。
次回のお話は、歯が治った、の意識が患者さんと歯科医師の間でギャップがあることをお話しします。
*Salehrabi, Robert, and Ilan Rotstein. “Endodontic treatment outcomes in a large patient population in the USA: an epidemiological study.” Journal of endodontics 30.12 (2004):846-850.