折れたファイルを取るべきかどうか〜意思決定について〜
ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。
今回のブログは、根管内で折れたファイルはどうすればいいか、です。
答えは、根管内で折れたファイルを取っても取らなくてもどちらでもいいです。
折れたファイルは基本的に異物ですから、体から取り除きたくなります。しかし、折れたファイルが根管内で徐々に錆びたり腐食することはなく、感染源になることはありません。
根管の消毒のために折れたファイルが邪魔するのであればファイルを取った方が良いし、折れたファイルがあっても根管の消毒に支障がなければ、あるいは、折れたファイルを取ろうとすると合併症を引き起こすと判断すれば、折れたファイルを根管治療中に取る必要はないです。
折れたファイルを除去する意思決定の要因

上の写真の矢印は折れたファイルを指しています。
折れたファイルを除去する意思決定のポイント*を以下に記します。
1. ファイルの上部が見えるかどうか
2. 術者の経験
3. 道具が揃っている
4. 折れたファイルの太さ
5. 折れたファイルの位置
6. 発生しうる合併症
7. 病変の有無
1〜3は環境的な要因です。
折れたファイルのトップが見えるようであれば除去は可能です(当たり前のことですね😄)
術者の経験はあってもなくても大丈夫だと私は思います。理由は、前準備の方が大切だからです。折れたファイルを根管から取ったことがない先生でも、事前にきちんと準備をしていれば、どうやって取れるかを考えられるし、必要な道具を揃えられます。ただし、経験を積んだ先生の方が折れたファイルを速く除去できることは確かです。
4〜7は、折れたファイルと根管との関係です。
一般的に、折れたファイルが太くて長いと細くて短いものよりも取りにくいです。
また、根管の上の方でファイルが折れているなら取りやすいし、根尖に近くなるほど折れたファイルを取りにくくなります。
長くて太いファイルが根尖近くで折れると、取りにくくなるということは、ファイルを除去する過程で合併症を引き起こしやすくなるので注意が必要です。合併症については、次回のブログでお話しします。
根尖に病変がある場合、根管治療中に折れたファイルを除去した方がいいけれども、合併症を引き起こす可能性が高い場合は、あえて折れたファイルは除去せず、必要に応じて外科的歯内療法で折れたファイルを除去した方がいいかもしれません。
上の写真の症例で折れたファイルを除去する意思決定のポイント1〜7の各項目を考察すると、折れたファイルの上部は見えていて、術者の経験はまあまあ、道具は揃っており、折れたファイルの位置は根管中央付近で、発生しうる合併症は折れたファイルはちょうど根管のカーブに差し掛かっているのでレッジ形成をしないように気をつけること、病変は認めないので根管が感染しているリスクは低い、以上より、折れたファイルは除去しやすいと意思決定しました。折れたファイルを除去して根管充填を終えたレントゲンが以下になります。

折れたファイルの長さは3mm程度でした。
レッジ形成をほぼすることなく、折れたファイルを簡単に除去できました。
次回から、折れたファイルの除去について各論に入ります。
お楽しみに。
*Madarati, A. A., Hunter, M. J., & Dummer, P. M. (2013). Management of intracanal separated instruments. Journal of endodontics, 39(5), 569-581.
