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2017.7.7

レントゲンで、歯の周りが真っ黒になっているのは、膿がたまっているから、と言われました。膿が大きいともう手遅れでしょうか?

みなさん、こんにちは。

レントゲンで、歯の周りが真っ黒に映っていたら、ビックリしますよね。しかも、膿がたまってると言われたら、知らない間に自分の歯が悪くなっていたと感じて、ショックを受けた方も多いと思います。

ただし、レントゲンで真っ黒になっている部分(膿)が大きいから治療をしても手遅れだ、小さいからまだ間に合うという結論にはなりません。

実際の症例でお話しします。

図1は、歯の周りの真っ黒(膿)が大きなレントゲンの症例です。

図1の症例は、37歳男性、右下顎第一大臼歯の根の先に、黒い影(膿)があり根管治療をしました。

図1の赤い矢印で指しているところが、黒い影(膿)です。黒い影(膿)ができる理由は、根管が細菌に感染しているからです。

図1左は術前のレントゲンで、大きな黒い影(膿)があります。

図1右は、術後6ヶ月のレントゲンです。黒いところ(膿)が術前よりも小さくなっているのがわかります。

患者さんの術後の症状は正常で、現在のところ経過良好です。
ただし、レントゲンの黒い影(膿)は術前に比べて小さくはなっているものの、まだ完全に消失していません。

大きな黒い影は小さなものより、完全に消失するまで時間がかかる、といわれています。もう少し、経過観察が必要そうです。

図2の症例は、歯の周りの真っ黒(膿)が小さいレントゲンの症例(46歳女性)についてです。

主訴は、歯肉が腫れている、とのことでした。

図2左上の口腔内写真の赤い矢印がさしているように、プックリと歯肉が腫れていました。当院に受診する前に、3回根管治療を受けているそうです。

図2の左下は、術前のレントゲンです。黒い影(膿)の範囲は、図1に比べると小さいです。しかし、この歯は抜歯しました。

抜歯した歯の写真は、図2の右側2枚です。赤い矢印で指しているところに、亀裂が入っています。この亀裂のことを歯根破折といいます。

以上より、歯根の先にできた黒い影(膿)の大小によって、治療をしても手遅れか間に合うか、といった問題にはならないことをご理解いただけたと思います。

歯肉の腫脹や歯根の先に黒い影(膿)ができる直接の原因は、細菌です。細菌を除去できれば、歯根の先にできる黒い影(膿)を小さくする可能性は高くなります。

しかし、細菌を除去できたとしても、別の問題があるとき、治療をしても治らない場合があります。

たとえば、図2の症例のように歯根破折があると、歯根の内部にある細菌が外にもれたり、歯周ポケットも形成され歯周病を併発すると、病気を治すことは難しくなります。

図1と図2の症例では何が異なるのか、図3に示します。

残存歯質量とは、治療をする歯の、オリジナルな部分がどのくらい残っているか、という意味です。残存歯質量が多いと、歯を残す条件としては有利になります。

図1の症例は、かぶせものの内部の詳細はわかりませんが、入っている土台の長さを考えると、歯の頭に相当する部分(歯冠部といいます)はあると考えられます。

図2の症例は、根の長さに対してかぶせものの大きさが若干大きいです。よって、図2の症例の残存歯質量は、少ない可能性があります。

次に、歯周病を併発しているかどうか、です。

図1の症例は、歯周ポケットは正常範囲内で、歯のぐらつきは生理的範囲内でしたが、図2の症例は、腫れている部分の歯周ポケットは深く、歯のぐらつきは少しありました。

最後に、歯内療法の問題です。

この2症例については、以前の治療でルールを厳守した根管治療を行っていないようでしたから、現状よりも改善できる可能性はあると考えます。

それから、再根管治療の成功率は一般的に約70%といわれています。
もし、根管治療で腫れや痛み、あるいは歯根の先にできた黒い影(膿)が改善できなかったとしても、歯内療法外科を行うと治る可能性がさらに高くなります。

ただし、歯内療法外科は、歯根の先端部分を切除する方法です。

歯内療法外科を行ったとしても、図1の症例は残存歯質量があります。しかし、図2の症例は、歯根の先端を切除すると残存歯質量がさらに少なくなります。

以上のことを総合して考えると、症例1は治療ができる条件がそろっていますが、症例2については、なかなか厳しい条件です。

ちなみに、歯根破折の確定診断は、直接目で見て確認することが唯一の方法ですが、術前に歯根破折を確認せずに、図2の症例が抜歯にいたった理由は、患者さんが抜歯をご希望されました。

患者さんには、3つの治療法を提案しました。3つの内訳は、根管治療か抜歯か、薬で腫れを縮小していくか、です。

根管治療を行い、歯根の先の黒い影を治すことができたとしても、残存歯質量が少ないため、将来的に歯根破折が起こるかもしれず、長持ちさせることが難しいかもしれないこと、根管治療を行っても、黒い影を治すことができなければ、通常であれば歯内療法外科を行うけれども、症例2の場合は歯根の先を切ることになれば、歯根はすべてなくなることになる可能性があり、歯内療法外科は適応にはならないであろうこと、それから歯周ポケットが深くなっている部分があり、歯周病を併発しているか、歯根破折の可能性があることを患者さんに説明したところ、患者さんは抜歯の選択をしました。

レントゲンで、歯の周りにある黒い影の大小で、治療をしても手遅れ、あるいは治療をしたら治る、という問題にはなりません。

まずは、患者さんの主訴を十分理解し、患者さんが訴える症状を改善できるからといって、歯内療法を行うのではなく、歯内療法を行っても、改善できない問題があるかもしれないことを患者さんに説明し、歯科医師が治せることと治せないことを区別し、患者さんにご理解をいただくことが何より重要です。

次回は、治療のステップを進めていくたびに、診断をする、術前に診断がつかない場合のお話しをします。
お楽しみに。

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