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- 2015.8.25
Penn Endo Study Club in Japan(実習編)
まだまだ暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は、暑さに負けず、日々がんばっております。
今年は、お盆休みというかプレお盆休みをももこ歯科はいただきました。しかし、医院はお休みですが、やらなければならないことは満載ですから、休めません。
こういうことは、大企業のお偉いさんなら当たり前のことでしょう。人の倍働かないと、会社は維持できませんよね。
ところで、8月8、9日は、PESCJ4回目大阪で根管治療の実習がありました。
なかなか難しい大臼歯の実習でしたが、その分得られるものは大きいです。というのも、受講生はマンツーマンで教えていただける、という贅沢なプログラムだからです。
受講生は、実習の課題を個々に設けることができます。例えば、上顎大臼歯の近心頬側第二根管の探索方法、下顎第一大臼歯近心根が3根管ある場合の探索、上顎小臼歯のイスムスをどこまですればいいか、等々。なんでもいいのです。
とにかく目的を持った実習をする、というシステムです。
実習の目的の背景には、見落とし根管があってはならない、というものがあります。なぜならば、見落とし根管があると、除去しなければならない細菌が根管に残っていて、根管治療は失敗する可能性が高くなります。
というわけで、今回の私の目的は、イスムス処理でした。細菌は、イスムスに入りこみ、治癒を阻害しますから、イスムスを可及的に除去した方がいいです。しかし、実際は削ると穴を開けたりしてしまいますので、適度というものが大切になります。抜去歯実習のいいところは、迷ったら反対側あるいは裏側から見えること。もっと削れそうだ、とか、もうやめた方がいいなどの、意思決定を養えるいいチャンスなのです。
それにしても、基本に戻る、ということがどれほど重要か、を思い知らされました。術野の確保(要するに、見えやすくする、ということ)が、あらゆる手術や治療において絶対条件であり、イスムス処理云々いうよりも前にやるべきことは、アウトラインをどれだけ必要十分にかつレントゲン的にきれいに見えるようにしなければならないか、ということに気づけました。よって、今回の私の目的はイスムス処理だけでなく、アウトラインの設定も新たに加えることができました。
アウトラインの設定。どうやったら、一方向から全ての根管が見えるようになるのか、を考えます。
そして、術後のデンタルは?
左:正方線投影 右:偏心投影
矢印は、アウトラインです。根管口からきれいにまっすぐ立ち上がっているのがわかると思います。根充剤の上端は、根管口よりやや下にします。
イスムス処理を適切に行えれば、根管の形成ラインもきれいになることがわかりました。これも、アウトラインが適切であったから、と言えると思います。
ご指導下さった、インストラクターの先生方、ありがとうございます。
さて、9月にトピックプレゼンテーションというビッグイベントがあり、私は解剖を担当します。それで、最近は、机に向かっている時間がやたらと多いです。見つけた文献の中に、こんなものがありました。
上顎大臼歯は、私が歯学部生だったころ、3根管と習っていたのですが、今ではもう4根管であることが当たり前になっています。この4根管目(近心頬側第二根管)を探すことは結構大変で、時間を必要とします。
ちなみに、近心頬側第二根管の発生率ですが、多い報告だと95%程度、低いと30%となっています。しかし、桁外れに低い発生率(9.6〜18.6%)だった文献がありまして、そこにはアウトラインが小さく、視野が確保できなかった(1)、と述べられていました。それから6年後にアウトラインを改良した報告がありまして、なんと近心頬側第二根管の発生率は34.4%に増加したようです(2)。現在の発生率は、さらに高い数字を誇ります。なぜならば、マイクロスコープや器具が1980年代よりも優れたものになっているからです。ついつい、私たちは文明の利器に頼りがちですが、基本に忠実であることが、非常に重要であることを再認識させられました。
やっぱりアウトラインは、大切です。
(1)Hartwell G, Bellizzi R. Clinical investigation of in vivo endodontically treated mandibular and maxillary molars. J Endodon 1982;8:555-7.
(2)R. Norman Weller, DMD, MS, and Gary R. Hartwell The Impact of Improved Access and Searching Techniques on Detection of the Mesiolingual Canal in Maxillary Molars JOE 1989;15:82-83