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2018.8.16

『歯が治った』≠『歯の治療が終わった』~患者さんと歯科医師の意識が合致している編~

みなさま、お元気ですか?
いつもももこ歯科のブログを読んでくださり、ありがとうございます。

患者さんと歯科医師の間にある認識のギャップ

今日のお話は、私が患者さんとお話をしていて、患者さんと歯科医師の間に、認識のギャップ感じることについてです。
私が感じるギャップの根底にあるのは、私が総合病院に勤務していた時に経験して感じていたことにあります。

私が歯科医師になってから10年くらいは口腔外科に所属していたので、複数の総合病院に勤務していました。
口腔外科と同じ病棟に、脳梗塞後の患者さんが入院していました。
患者さんの大部分が総入れ歯を使って食事をしなければならないようで、ミキサー食が多い印象でした。
脳梗塞後で嚥下障害が後遺症としてある場合はともかく、もし私がみた患者さんがご自身の歯で食事をすることができていたら、形のある食べ物を食感を味わいながら楽しい時間を過ごせただろうに、と思っていました。
一般的なイメージの食事を摂っていた方が、体力の回復が早いと思います。
病院食はまずい、というイメージがあるけれども、栄養管理はきちんとされているので、『味わう』という楽しみがないと、せっかくの栄養管理をされている食事がもったいないです。

それから、重症な病棟患者さんの中で一番思い出に残っている方は、骨髄性白血病の患者さんです。『歯肉からの出血が止まらない』とのことで、血液内科の病棟から呼ばれて病室まで行ったものの、なかなか止血できません。
結局、止血はできましたが、出血量が多く輸血をして対応しました。
このような問題がすべての骨髄性白血病の患者さんに起こるわけではなく、この患者さんの場合、器質的な問題が根源にあるため歯肉からの出血が起きました。
その器質的な問題とは、歯周病です。
もし、この患者さんが定期的なメンテナンスを受けていたら、病気の発症前に歯周病の治療を受けていたら、このような事態には陥らなかったでしょう。

『もしこの方が脳梗塞になったら…』『もしこの方が白血病になったら』………
ここまで考える必要はほとんどないのかもしれません。しかし、最悪の状態をなんとか避けてほしい、という思いが根底にあるので、ももこ歯科を受診していただいた患者さんをなんとか救済できないか、と考えてしまうのです。

上記に例えで示した、脳梗塞の患者さんも骨髄性白血病の患者さんも、定期検診を受けていたら、と考えると、歯科医師として啓蒙活動が必要だと感じます。

保険診療と自由診療での治療方針とそれぞれのメリットとリスク

さらには、虫歯一つにしても色々な治療方針があって、その提案をして患者さんに情報提供するのは歯科医師の役目です。

保険診療であれば、大勢の人の税金でプールしたお金を大事に使わなければならないので、ルールに則った治療になります。
一方で自由診療は、ルールはありませんから、患者さんの希望に応じた自由な選択ができます。ただし、プールしたお金はありませんから、経済的な負担が大きくなります。

保険診療と自由診療での治療方針とそれぞれのメリットとリスクを患者さんは知る権利がありますし、患者さんへの情報提供を歯科医師から行う義務もあります。
リスクとメリットを患者さんが知って、患者さん自らご自身の治療方針が選択できるように、歯科医師は提案したほうがいいと、私は思っています。

脳梗塞の患者さんも骨髄性白血病の患者さんも、このような提案を受けて自ら選択した結果、私が見た事態になっていた場合は別として、情報提供されず、知らずにいたままだったら、と考えると、歯科医師として無念でなりません。

『虫歯ができないようにするにはどうしたら良いのかな』
『悪くならないようにするにはどうしたら良いのかな』
この考えは、まったくもって正論ですし、私の方が学ばされます。
高校生の患者さんに、上記のような問いかけをしてもらったことがあります。
とても嬉しかったです。

『どうしたら健康のままでいられるか』
を意識している患者さんの例を示します。

被せ物のクラウンがすり減った(咬耗)患者さんの事例

図1の患者さんは、54歳女性。
2017年6月に黄色い矢印の歯が、歯のひび割れのためにクラウンをかぶせました。その後、かむと痛いという症状はなかったのですが、クラウンをかぶせてからおおよそ1年後の2018年4月にクラウンの表面がすり減って中のメタルが見えてきています。
その4ヶ月後、2018年8月にはすり減り(咬耗)が広がってきています。
対応策として、マウスピースを夜間にしてもらうようにしました。このような対応も、定期検診を受けていただいてるからできたことです。

削らない方がいい虫歯がある患者さんの事例

症例1の患者さんは、54歳女性です。
白い矢印のところに小さな虫歯があり、大きくなってきたかもしれない、と思いレントゲンで確認したところ、3年経過した2018年現在も大きさに著変なく、経過観察を続行することになりました。
中には、虫歯は小さなうちに削って治した方がいいという考えもあるかと思います。しかし、この程度の虫歯の大きさであると、健全な歯を削る量の方が多くなります。削ってかぶせるとなると、虫歯の部分よりも大きくかぶせ物をかぶせることになり、歯とかぶせ物の隙間が広くなる分、そこから唾液の侵入を許すことになりますから、可能な限り自分の歯でいた方がいいと思います。
だから、私の場合は、症例1のタイミングでは削らずに経過観察をしています。

定期健診の大切さ

この2例は、患者さんが定期的に受診していただいているおかげで、何かが起こる前に対応させてもらえていますので、とても感謝しています。

事前対応策が功を奏し、起こってほしくないことが起こらなかったとしても、評価することは難しいです。
ただし、望ましくないことが何も起こっていないのであれば、今までやってきたことが良かったから何も起こっていないのです。
ひとまずそれを継続していくことを最善策として考えています。
それから、患者さんの負担を軽減することも大切です。
たとえば、重度の歯周病でこのままだと歯をどんどん失いかねない状態だとします。
しかし、治療がひとまず終了し患者さんの状態も安定し、なおかつ自己管理が上手にできているようであれば、定期検診の間隔を伸ばすことを考えてもいいと思います。

患者さんと歯科医師の間に起こる意識のギャップについて、今回は双方の意識が合致している場合についてお話ししました。
機会を見ながら、意識のギャップがある場合についてお話ししていこうと思います。

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