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2023.5.20

ももこ歯科での根管治療2〜サイナストラクトは治るのか2〜

ももこ歯科のブログをよんでくださる皆様、いつもありがとうございます。

今回もケースレポート、〜サイナストラクトは治るのか〜シリーズ第二弾です。
本症例もサイナストラクトが治癒したケースです。

概要

48歳男性

主訴:左上歯肉が腫れている

現病歴:10年以上前に、以前通院していた歯科医院で左上顎第一大臼歯の根管治療を行なった。しばらく症状はなかったが、2022年11月末頃から、左上顎の腫脹が出現した。痛みはない。

診断までの経緯

診査の結果、左上顎第二小臼歯は生活歯であるにもかかわらず、根尖部の圧痛(palp.)を認めます。それから、左上顎第一大臼歯近心頬側の歯周ポケットは5mmでした。

左上顎第二小臼歯頬側歯肉にサイナストラクトが存在し、ポイント造影すると、左上顎第二小臼歯の根尖付近にポイントが到達していることがわかります。

診査の結果とデンタルの所見は矛盾しています。

そこで、CTを撮影しました。

左上顎第一大臼歯の根尖部透過像は、左上顎第二小臼歯頬側皮質骨まで波及し、3D画像では左上顎第二小臼歯根尖部が露出していることがわかります。

したがって、左上顎第二小臼歯の根尖部圧痛の原因は、左上顎第一大臼歯の根尖性歯周炎であることがわかりました。これで、診査の結果と画像所見の整合性がとれたわけです。

では、左上顎第一大臼歯の根尖性歯周炎はなぜ起きたのか?
デンタルやCT所見から、根管の清掃不足により、根尖性歯周炎が発症したと思われます。

左上顎第一大臼歯近心頬側の歯周ポケット5mmの原因は、CT上歯内歯周病変は否定されるので、歯根破折穿孔が考えられます。穿孔は、CTでわかる場合もありますが、本症例はアーチファクトにより不鮮明です。なぜ近心頬側の歯周ポケットが5mmなのかは、視認することではっきりわかります。

診断と治療方法

<診断>

歯髄:既根管治療歯
根尖:症状がある根尖性歯周炎
もしくは、歯根破折穿孔

<治療法>

根管治療、もしくは抜歯

患者さんの主訴『左上顎歯肉が腫れている』=『左上顎歯肉が、今後腫れることがないようにしてほしい』=『治った』と解釈できます。歯肉の腫脹の直接的な原因は、左上顎第一大臼歯根尖性歯周炎と考えられ、根管治療で治癒することはできるかもしれません。一方でもう一つの問題である5mmの歯周ポケットの原因は、治療中に視認することではっきりします。歯根破折が術中に発見されれば治療は中断し、穿孔であれば修復すること、それから、根管治療後腫れが改善しなかったり、サイナストラクトが消失しない場合は、歯根端切除術を施行することを患者さんにお話ししました。

患者さんは、根管治療を選択されました。

治療中の所見

クラウンを除去した直後の遠心歯肉に発赤を認めます。それから、メタルコアを除去した際、遠心歯質に虫歯を発見しました。セメントを超音波チップで除去すると、近心頬側歯質に穿孔がありました。

以上の所見から、“なぜ根尖性歯周炎になってしまったのか?” “なぜポケットが5mmあるのか”

私の考察は、以下のとおりです。

“なぜ根尖性歯周炎になってしまったのか?”

歯冠側漏洩:クラウンのマージンが不適合で、遠心歯肉が炎症を起こし、遠心歯質に虫歯ができた
②根管形成が不十分であり、根管が汚染され根尖性歯周炎を発症した

“なぜポケットが5mmあるのか?”

近心頬側歯質に穿孔があったから。CTでも肉眼所見でも歯内歯周病変は原因ではなさそうでした。

 

長くなったので、今回はここまでとします。

治療後の経過については、次回のブログでお話しします。

お楽しみに。

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