根管治療について
根管治療とは

当院では、ラバーダム防湿とマイクロスコープを使った、米国:ペンシルバニア大学歯内療法学講座のコンセプトを厳守した根管治療を行います。
根管治療とは、簡単にいうと歯の根の中をキレイにする治療です。歯の根っこの内部には、神経や血管が入っています。ここを根管といいます。虫歯が進行して、根の中に菌が入ると汚れがたまります。汚れている根管をキレイにするために、ファイルという器具で掃除し、消毒薬を使って汚れを洗い流し、治療と治療の間で菌を増やさないように薬をつめます。
当院では、菌を歯の中にいれないように、ラバーダム防湿や可能な限り、器具を使い捨てにしています。また、治療の安全性や精度を高めるために、マイクロスコープを使用しながら、根管治療を行なっています。
根管治療が必要になるのは、どのようなとき?
歯がズキズキ痛む、何もしていないのに痛い、かむと痛い、 歯肉が腫れた、痛みはなかったけどレントゲンを撮ったら根の先に黒い影があった、等々の症状があったとき、根管治療が必要になるかもしれません。
ただし、きちんとした診査を行った上で、診断し、治療方針が決定されます。治療方針については、患者さんのご希望を最優先しながら、歯の状況をふまえて今後どうすべきか、一緒に決めていきます。
根管治療の効果とは?
根管治療の目的は根尖性歯周炎の予防と治療、そして疼痛管理です。根尖性歯周炎とは、レントゲンで歯根の先に黒い影ができる病気、あるいは、かむと痛い、何もしなくてもズキズキする、歯肉が腫れる、等々の症状がある病気です。根尖性歯周炎の原因は細菌です。根管治療のコンセプトは、根尖性歯周炎の原因である細菌を除去すること、それから根管の形態を保存することです。
根管治療の目的を達成するためには、ルール(基本コンセプト)を守らなければなりません。予防や治療の結果、根尖性歯周炎にならなければ、痛みや腫れが出ることもありませんから、快適な生活を送れる可能性も高くなります。
当院が厳守している根管治療の基本コンセプトとは?
根管治療を行う上で、守らなければならないルールのことです。車の運転を安全に行うためには、当然のことながら、交通ルールを守らなければなりません。交通ルールと同様に、根管治療もルールがあります。
根管治療のルール=基本コンセプトは、具体的にいいますと『無菌的処置』と『解剖形態の維持』です。『無菌的処置』は、ラバーダム防湿、患歯の消毒、可能な限り器具をディスポーザブル化する、機械的拡大、根管洗浄、根管貼薬です。
『解剖形態の維持』とは、とても複雑な形態をしている根管解剖を破壊せずに、維持することです。根管の形態を破壊すると、細菌を押し出してしまうことになりかねません。その結果、治療後、再度病気になる可能性もあります。
無菌的処置
ラバーダム防湿

ラバーダム防湿は、唾液によって運ばれる細菌を歯の中に入れないようにします。また、器具の誤嚥防止、歯を削った時に出るお水が喉にたまって苦しくならないように、洗浄液がお口の中に漏れないようにすることも目的になります。
詳しい内容をさらに知りたい方は、以下のブログをご一読ください。
<無菌的処置概要>
<歯の中に細菌を入れさせない処置>
- ラバーダム防湿:
「ラバーダムのこと、患者さんはどう思ってる?」
「根管治療のキーポイント!ラバーダム防湿を根の治療中に行う理由」
「根管治療中、ラバーダム防湿時の工夫点」 - 器具の衛生管理:
「根管治療を行うための、器具の準備について(スタッフ奮闘記)」
「当院の器具の滅菌について〜根管治療編〜」
<歯の中の細菌を除去する処置>
- 機械的拡大:
「歯根の治療の方法パート1〜機械的拡大について〜」 - 洗浄剤と貼薬剤:
「歯根の治療(根管治療)の方法パート2〜洗浄剤と貼薬剤がなぜ必要か?〜」
「歯根の治療(根管治療)の方法パート3〜次亜塩素酸ナトリウムと水酸化カルシウムについて〜」 - 薬剤使用にあたってのリスク管理:
「根管治療で使う薬剤の注意事項〜次亜塩素酸ナトリウムと水酸化カルシウムの危険性について〜」
<歯内療法について>
徹底した滅菌体制

器材をできるかぎり使い捨てにする、治療機器の徹底的な滅菌処理などを行うことで、感染防止に努めています。
解剖形態の維持について
解剖形態とは根管の内部の形態のことです。根管解剖は茶筒のようにまっすぐストンとした形ではなく、とても複雑な形態をしています。木のように本幹から枝葉が分かれているようなイメージです。
複雑な形態をしているところに細菌が入り込むと、洗浄剤や拡大操作で細菌を除去できないため、停滞させてしまうことがあります。その結果、複雑な根管解剖は、根管治療後の治癒を妨げてしまう要因でもあります。
根尖を破壊してしまうと、根管治療の予後に大きな影響をもたらします。そのため、解剖形態を維持することが重要なのです。
Clark, David, and John Khademi. “Modern molar endodontic access and directed dentin conservation.” Dental Clinics of North America 54.2 (2010): 249-273.
Ricucci, D., and K. Langeland. “Apical limit of root-canal instrumentation and obturation, part 2. A histological study.” International Endodontic Journal 31 (1998): 394-409.
Vertucci, Frank J. “Root canal morphology and its relationship to endodontic procedures.” Endodontic topics 10.1 (2005): 3-29.
通常の方法と基本コンセプト(ルール)を厳守した根管治療の違い
病気が治る確率が大きく変わります。下記では、それぞれの治療後のレントゲン写真を紹介します。

根管治療後に、病気を発症させない、あるいは、病気を悪化させないために、細菌をいかに除去するか、がキーポイントです。それには、基本コンセプトを厳守した治療が必要になります。

基本コンセプトを厳守した根管治療の成功率

根管治療で成功しなかった場合、外科治療(歯根端切除術、意図的再植術)を行います。
Sjögren, U. L. F., et al. “Factors affecting the long-term results of endodontic treatment.” Journal of endodontics 16.10 (1990): 498-504.
Gorni, Fabio GM, and Massimo M. Gagliani. “The outcome of endodontic retreatment: a 2-yr follow-up.” Journal of endodontics 30.1 (2004): 1-4.
基本コンセプトを厳守した治療に不可欠なマイクロスコープとは?
マイクロスコープは、歯や根管など、とても小さいところを大きく拡大して、非常に見やすくしてくれる機器です。

マイクロスコープを使用することで、治療の精度を上げます。
肉眼では見えないものが、はっきりと見えるようになり、より良質な安全性も提供できます。

歯内療法(根管治療)の治療の流れ
虫歯のある歯に診査をして診断後、生活歯髄療法が適応か、根管治療(抜髄)が適応かを選択します。

歯内療法の流れは、フローチャートの通りです。
生活歯髄療法の場合(ルート1)

歯髄保存が可能であれば、生活歯髄療法を行います。生活歯髄療法後、痛みが出たり、腫れたり、根の先に膿ができたら、根管治療へ移行>します。
<生活歯髄療法について>
根管治療(抜髄)の場合
歯内療法外科へ(ルート2)

歯髄が保存不可能の場合、根管治療(抜髄)を行います。根管治療後、痛みや腫れが出たり、根の先に膿ができたら、歯内療法外科へ移行します。
再根管治療へ(ルート3)

根管治療後、痛みや腫れが出たり、根の先に膿ができたら、もう一度根管治療を行うことを再根管治療あるいは感染根管治療と言います。再根管治療(感染根管治療)後に、痛みや腫れがあったり、根の先の膿がさらに大きくなったり、大きさが変わらなければ、歯内療法外科を行います。
ルート2とルート3の大きな違い
再根管治療を行うか行わないかです。根管治療を行なった後、もう一度根管治療を行う場合は、根管内がきれいになっていないと判断した時です。反対に、根管治療後ダイレクトに歯内療法外科へ移行する場合は、根管内はきれいになっていると判断できる場合です。
根管治療と抜髄、感染根管治療、再根管治療の違いについて
根管治療とは、根管を無菌的にきれいにする治療です。抜髄は、根管に歯髄が存在している場合に行う根管治療のことです。 感染根管治療とは、根管が感染していると考えられる場合の根管治療のことです。再根管治療とは、根管治療を行なった後、もう一度根管治療を行うことです。言葉の違いはあっても、治療の内容と意味は根管治療のことです。
いずれの治療も目的は、根尖性歯周炎の予防と治療ですから、治療内容も同じです。感染根管治療だからといって、抜髄の時よりも強い薬を使うことはありません。
歯内療法外科と再根管治療について
根管治療で改善しなかった病気や症状、根管治療後にできた病気や症状を治すために、再根管治療や歯内療法外科を行います。ただし、その歯のあらゆる状態と患者さんの利益を尊重し、歯内療法外科を行うか、再根管治療を行うかの意思決定をする必要があります。
再根管治療を行う場合
- かぶせ物と歯の隙間から唾液の侵入が疑われる場合
- かぶせ物のフィット感が悪い場合
- 虫歯を認める場合
- 根管内の汚染が考えられる時
- 破折した器具が根管治療によって除去できる場合
歯内療法外科を行う場合
- 根管治療で改善がなかった痛み
- 歯内療法外科によって除去できる根管内の破折した器具や、修復できる穴
- かぶせ物の除去が難しいとき
- 外科処置で診断が可能な場合
歯内療法後のかぶせ物について

歯内療法後の歯を健康のまま維持していくためには、細菌に感染させないように、歯の中へ唾液が入ってくることを避けなければなりません。
そのため、歯内療法後のかぶせ物はフィット感がいいものをおすすめします。
治療費について
治療法の提案は歯科医師が、治療法の選択権は患者さんにあります。
国民皆保険のおかげで、世界と比較しても日本は長寿国となりました。戦後、日本国民が一丸となって健康で長生きしたい、という希望がかなった結果だと思います。諸外国の健康保険事情と比較しても、とても素晴らしいと思います。
特に歯科治療は、エネルギー源となる食べ物が入るお口の健康を保持増進することを目的としていますから、お口の健康は体全体の健康の源になるといっても過言ではありません。それにもかかわらず、歯科治療は、同じ歯を繰り返し治療することが多いようです。
保険制度内での歯科治療は、プールしたお金を大事に使わなければならないので、ルールが存在し、治療費はプールしたお金を使えるので安価ですみます。しかし、このルールは、患者さんが希望していなくても従わざるを得ません。
一方で、保険外診療、いわゆる自由診療での歯科治療であれば、プールしたお金を使いませんから、患者さんの経済的な負担は増えます。しかし、患者さんご自身のお金を使うのでルールは存在せず、治療法の選択肢は増え、患者さんの希望に応えられる治療方針になることは多いです。
患者さんは、保険制度内での治療方法と自由診療での治療方法を知ってから、ご自身で後悔しない治療法を選択した方がいいと、私は考えています。
治療法に選択肢があることをももこ歯科で初めて聞いた、とおっしゃる患者さんが多いのは事実です。患者さんご自身の健康は、ご自身で考えて選択し、ベストな方法を見つけた方が幸せではないか、と思います。
日本の根管治療の現状とは?
基本コンセプトを厳守した治療を行った際の成功率を仮に90%としたら、再治療について、6月は約50,000件、年間が約600,000件になるはずです。
しかし、日本における根管治療の現状は、残念ながら、再治療が初期治療と比較して圧倒的に多い、という結果にいたっています。

歯種別に見ても、6〜7割の成功率です。
注)根尖部の透過像は、骨の厚みにより、上顎前歯部は検出しやすく、臼歯部は検出しにくくなります。
根管治療の回数の目安について >>詳しくはブログで
だいたい3〜4回程度が上限です。根管治療がはじめての歯の場合1〜2回で、複数回目の歯の場合は2〜4回程度です。
根管治療が複数回行われている歯の場合、初めての歯よりも治療回数が多いのは、根管に入っている薬を取らなければならない、根管の形態が破壊されている、あるいは穴があいていることがあり、修復処置が必要になってくるためです。
1回の治療時間:1時間〜1時間半
初めての神経の治療:2〜3回
2回目以上の神経の治療:3〜4回
マイクロスコープを使用し、治療の精度を上げるため、どうしても1回の時間がかかります。約90%の成功率を確保するためには、下準備や知識の向上のために、相応の時間と多くのコストがかかります。そのため、通常の方法の範囲内で行うことは、極めて難しいです。
しかし、基本コンセプトを厳守した治療を行うと、通常の方法では治らなかった歯や抜歯をした方がいい、と言われた歯でも残すことができるかもしれません。
初診時に詳細な診査と診断を行います。
根管治療中の痛みは?
治療中に痛みが出ることは、基本的にありません。根管治療の目的の一つに、疼痛管理がありますから、治療前に必ず麻酔をします。ただし麻酔の効果が不十分なこともありますので、その際は遠慮なくおっしゃって下さい。治療は中断し、麻酔を追加して、痛みがないように配慮します。
また、治療後に痛みが出ても、痛み止めを飲めば治る程度の痛みで、頻度としては少ないように思います。
どうしても歯を残したい、とお悩みの方へ
3.歯の痛みが改善しない
5.根の治療が長引いている
根にヒビが入ってる、割れている場合の確定診断は、直視のみです。
基本コンセプトを厳守した根管治療(根の治療)なら、お悩みを解決できるかもしれません。
まずはお気軽に下記の番号にお電話ください。
お問い合わせ・ご相談は0466-52-5351まで